CJコラム

訪日ビジネスを考える 訪日中国人を知る (1)~旅行ルートの分散化~

「訪日ビジネス」という言葉は、もはや手あかだらけの感がありますが、
それでも「定住人口1人減少分の年間消費額を補うには、年間7人の外国人旅行者を新たに誘致することが必要」
(出典:観光庁 訪日外国人消費動向調査(2015年)より)という試算と、
昨今の日本国の人口減少問題を鑑みれば、常に検討しなければならないテーマといえるでしょう。

訪日ビジネスのこれまでの論調は、単に『爆発的に増加する訪日外客を如何に捌くか』という受動的なものが多かったのではないでしょうか。
しかしながら、官公庁発表の様々な報告書を見る限りは、来るに任せての対応では、売上が上がらない結果になっている、あるいは、今後なるように見受けられます。

訪日外客数が急激に増加し始めた2012年当時と比べると、1ドルあたり40円も円安になり、中国人を中心とした爆買いも一巡した今、各国の文化や思考の背景を理解し、トラブルを回避しつつスマートに訪日外客向けビジネスを考える良い機会ではないでしょうか。

その最初として、2016年は637万人もの訪日人数を記録した中国人を取り上げたいと思います。
2017年1-3月期では国籍別で韓国に抜かれ2位となっていますが、訪日ビジネスにおいては無視できない相手であることに変わりはありません。

旅行ルートの分散化
日本政府観光局(JNTO) 訪日外客数と国土交通省 訪日外国人消費動向調査データを掛け合わせ、訪日中国人の都道府県別訪問客数を計算すると以下の様になります。

2014年の訪日中国人2,409,158人の都道府県別訪問率も計算し並べてみたところ、
東京と大阪に集中していた状況に若干の変化が生じていることがわかります。
上位では、東京都と、それに付帯する形で訪問する神奈川県が訪問率を大きく落とし、愛知県も訪問率が低下しています。

これらの都市は、いわゆる「ゴールデンルート」と呼ばれる最もメジャーな旅行ルート上にあるのですが、ここから分散した傾向が見て取れます。この分散を生んだ原因は、千葉県の方オン率が大きく増加していることにあります。これは、成田発着便が2015年冬ダイヤ以降増加を続けていることで生じています。
2014年までの中国からの来訪者は、北海道・関西・九州の空港から入国する方が多数であり、北海道への入国者は北海道内、関西への入国者は東京を目指すルート(ゴールデンルート)、九州への入国者は九州内という旅程に集約されていました。
一方、成田からの入国者が増えたことで、そこから関西を目指すルート(ゴールデンルート)のほか、北陸や東北へ向かうルートも開けました。
その中でも注目すべきは、石川県と新潟県です。伸び率は小さく見えますが、実数として4万人ほど中国人観光客は増えています。
北陸新幹線の開業と相まって、成田増便により大きく恩恵を受けている地域といえます。

こうした旅行ルートの分散化が新しい日本の価値を発見させ、より多くの訪日客が増える原動力になっていきます。
次回は、訪日中国人向けにビジネスを拡大していく上での検討ポイントをお伝えします。お楽しみに。

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