CJコラム

中国人にとって「使い心地の良いサイト」とは何ですか?~ Vol.4~

人間の行動、心理は変化しやすいものです。
日進月歩で発展を続けている中国市場では、消費者の関心は非常に速いスピードで移り変わっていきます。
このシリーズでは、読者の皆様に中国市場の現状について消費者の観点から様々な情報をお伝えしていきます。

以前の記事では、近年のオンラインビジネスの目まぐるしい発展によって、中国国内の多くの実店舗がその影響を受け撤退しているということを述べました。このような現状をお伝えすることで、海外の読者の中には不安や疑問を抱く人がいるかもしれません。早速、下記の問題について説明します。

 

・オンラインショップは実店舗型の小売業を超えることができるのか?

2003年5月10日、Taobaoは杭州の湖畔花園(住宅団地名)で設立されました。
オンラインの小売り事業はAlibabaよりも先にeBay、Eachnet(易趣)、卓越(後のアマゾンチャイナ)がすでに始めていました。
1998年、中国福州で現地の生鮮食材を主力した実店舗型の永輝スーパーマーケットが発足しました。
永輝は当時、外資系スーパーマーケットとハイパーマーケットが行っていた服装・日用品・家電を主要商品とする販売方式をやめ、消費者の日常生活に焦点をあてた営業方法を採用しました。特に当時の中国では、生鮮市場はまだライバルが少なく未開拓の分野でした。また生鮮食品ビジネスを実施にするにあたり、現地化を進めるための人材を採用することで、ウォルマートやカルフールなど外資系企業との差別化を図りました徹底して現地化した生鮮食品ビジネスと安定したサプライチェーンの構築により、30%を超える果物と野菜の廃棄率を、永輝は4~5%にまで下げることに成功しました。

2004年、永輝は福建省から重慶に進出し、中国全土への展開の第一歩を踏み出しました。
さらに2009年初めに永輝北京六里橋支店を開業し、2018年8月17日には、1000店舗目をオープンさせました。
2017年の時点で永輝は18.17憶元の純利を達成しています。
永輝の発展過程は、Taobaoが奮闘してきた道のりと時期が重なっています。四川省の紅旗スーパー、浙江省上海の華聯スーパー、江蘇省の蘇果スーパーなど各地域の現地スーパーも永輝と類似した戦略を取り入れて発展しています。このように永輝スーパーを代表とする実店舗型の小売業も発展を続けているのです。

 

著者の母親が初めて永輝スーパーで買い物を経験した際には、「近くに新しいスーパーができたよ。野菜や果物や牛乳は安くて新鮮だったよ。」と言いました。その時のうれしそうな母親の顔をまだ覚えています。また、先輩がTaobaoで2000円のデザインの良い黒いジャケットを買ったことも覚えています。当時、そのジャケットはオフライン実店舗で4000円位で販売されていました。
1998年から2002年にかけて中国で起きたリストラブームに巻き込まれた大人たちの憂い顔も未だに忘れることができません。中国社会科学院研究員の推定によると、失業率が21.4%にも達した年もあったそうです。この大きな社会変動によって、起業・低価格・新しい生き方などがその年代のキーワードとなりました。

Taobaoを利用したネットショップではオーナーたちは自分で納税する必要はなく、Alibabaが納税をまとめて行います。
また、ネットショップは実店舗とは異なり、家賃を負担する必要もありません。
中国でオンライン販売の小売業が誕生した当初は、生産や物流などのサプライチェーンがまだ構築されていませんでしたが、Taobaoが発展するに伴い物流事業も整備されていきました。
また、当時は生産サプライチェーンが完全でなく商品数も少なかったために、実店舗も市場のニーズに柔軟に対応する力がありませんでした。
Taobaoはそれまでの小売業における弱点を克服し、ニューリテールの形を築いたと言えます。
オンライン販売網を作り上げたTaobaoは、実店舗の閉店を加速させたのではなくTaobaoが小売業が顧客に対応できる体制と実店舗が生き残るための新しい道を作り出したと言えるでしょう。

オンライン販売が実店舗型を縮小させる直接的な原因とはなりません。
実店舗型の小売業もオンライン販売の小売業も、経営を支えているのは生産と物流のサプライチェーンです。
Taobaoを代表とするオンラインの小売業は景気が悪化した時代において、家賃や税金などの点で実店舗型の小売業に比べて優位性があるため、消費が低迷するなかでも国内の物流と生産の問題に素早く対応することができました。

現在、成熟したオンライン小売業が実店舗型小売業をけん引し、共に発展していく中で「ニューリテール」を実現しています。ニューリテールの登場は、消費者の感じている不満やこれまでは「やむを得ないこと」として放置されていた問題を解決することで話題になっています。

次回の記事では、これらの「やむを得ないこと」についてお話します。

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