前回は訪日中国人の旅行ルートの分散化についてまとめましたが、今回は実際に訪日中国人向けにビジネスを拡大していく上で、検討しなければならない点についてまとめます。
中国人が訪日時に期待している物事
国土交通省 訪日外国人消費動向調査 によると、中国人が訪日前に期待していたことと実際に行ったことは以下の様になっています。
昨今ではショッピングよりも体験にシフトしていると言われますが、訪日前に期待していたこと(左表)を2014年と比べてみると、確かにそのように見受けられます。しかし、訪日中にしたこと(右表)を見ると、実際は日本食を味わい、ショッピングに出かけています。むしろ、ショッピングについては2014年よりすそ野が大きく拡大しています。
つまり、訪日の第一目的は、確実に観光と体験にシフトしており、それに強い地域には同時にお金も大きく落ちるということを示していると読むことができます。一方、名所が無いところにショッピングセンターがあっても、以前と比べてお金を落とさなくなっているとみることもできるでしょう。
訪日時のショッピングについて中国人が期待、評価している点は
「流通の確かさ」「日本製への信頼」「店頭品の故障率の低さ」「品揃えの豊富さ」
ですが、これらは日本国内のどこで買っても保証されることでもあります。これを勘違いして現状維持の接客を続けていると、訪日外客が増えるにつれ、客足は遠のいていくでしょう。中国人の思考の背景を理解し、正しい接客を行わなければなりません。
ちなみに、上表で期待値と実利用率双方が高い、旅館や温泉は、2014年時点で満足した中国人は利用者のわずか33%でしたが、2016年には約8割の中国人が満足したと回答しています。時間配分の自由度が高く、より良い宿泊施設を選択できる個人旅行者の増加が満足度を上げた一因ですが、それ以外にも、現地での中国語(簡体字)での案内の充実と、中国のSNS上での体験談と作法の広がりが背景にあります。受入側の取り組みが満足度の向上に繋がった例と言えるでしょう。
我々日本人もそうですが、海外に行って流暢な日本語でやりとりできるというのは、ショッピングをするうえで安心できる大きな要素であり、それはどこの国の旅行者でも同じです。
特に、中国人はその商品やサービスを知っていても「価格と接客は比例するべき」と考えますので、高いものを販売するのであれば、その商品やサービスの知識を持って価値を中国語で説明し、納得させるというコミュニケーションが不可欠です。中国人はまず最初に値引きから入ってくるのが定番(なぜならばこの時点では説明を受ける前なので、価格と価値が合っていないと思っているから)ですので、価格と価値が合っていることを説明できなければ延々と値引きだけを迫られ、最終的には買わずに店を去ってしまうでしょう。これを経験すると『中国人は特別扱いばかりを求めて面倒だ』という話になりますが、正しくは『非常に面倒だが、買うつもりでいる客』です。中国人が商品を手に声を掛けてきたならば、それは買ってもらうチャンスとみて間違いありません。
他にも、ルールを先に決めてしまうことも有効です。例えば、割引クーポンは『ここまでは値引きするが、これ以上は値引きしません』というルールであり、こうしたルールがわかると、中国人はそれ以上値引きを迫ってきません。わかりやすく、得をする話なので、クーポンは中国人に特に人気があります。
爆買いは一巡したとは言いますが、ビザ発給要件緩和で、訪日中国人のボリュームゾーンは年収1,000万円以下になっていることから、爆買いしている方が平均値では目立たなくなってきているだけではないでしょうか。実際は爆買いしている方は一定以上変わらず存在しています。ただし、買う場所と買うものは上記の通り変化しています。