JNTO、日本交通公社、文化庁、観光庁、あるいは、各自治体、業界団体、民間リサーチ会社などなど、様々なところで訪日外客に関する調査結果が発表されています。
水際対策の撤廃となった直後の2023年5月には、訪日外客数が190万人まで戻るなど、急激に訪日観光客数がコロナ以前の水準に対して急激に回復してきていることで、各種調査公表も増えてきています。
そんな中から、コロナ前と現在で、訪日に関して変化があったかどうかについて、様々な調査結果をミックスして、総論的なものをまとめてみることにします。
訪日意欲について
「コロナパンデミックが収まったら行きたい国」というアンケートでは、日本が1位でした。アジア圏各国では日本が1位。欧米圏各国では2位だそうです。
しかし、一方で、海外旅行をしようとしている方の2~4割の人は、全く日本に興味が無いし、行きたいとも思っていないそうで、結構極端な分布があるようです。
興味が無い原因は、『異文化(日本固有の文化)に魅力を感じない』『日本の様々な観光資源にいずれも興味をそそられない』『遠い』『(おそらく歴史や人種など根深い理由で)日本が好きではない』などが挙がるようです。
訪日目的
2023年現在、ショッピングはややトーンダウンし、その後ろに隠れていた、「食事」「体験」コンテンツが訪日目的として上位になっています。
この「食事」「体験」の中身ですが、『箸で和食を堪能し、郷土料理を食べて回る』とか『忍者になる』とか、日本ならではというものに全寄せしたものではありません。
「食事」「体験」の主流は、「細やかな配慮が行き届いた快適なサービスを受ける」のが主流です。全員が旅館に泊まりたいわけでもないですし、和服を着て街を歩きたいわけでもありません。
日本で進化発展した自国文化、自国ブランドを体験したいというのがベーシックなようで、その中で、エッジの効いたコンテンツとして日本文化体験をいくつか取り入れてみるという考え方だそうです。
また、「体験」については、日本の日常風景自体に驚きが多々あるというのは今も変わらないようで、日本人からしたら特別でもなんでもない場所に、結構外国人旅行客がカメラを向けたり、訪問したりということはあります。日本に来ること自体が旅行目的であるという方も、全体の3割程度はいるようです。
爆買い
コロナ以前は、爆買いという言葉が象徴的でしたが、データ的にそれはアジア圏の方、特に中国からの観光客でした。2023年5月時点では、中国は、団体旅行解禁対象国に日本を入れていないため、爆買いはトーンダウンした状態です。
円安の影響で、欧米各国はその代わりになるかというと、それはまずあり得ません。
ブランド品は自国で正規品が買えますし、高いお土産を親族知人に配って自慢する文化もありませんから、旅の思い出として適度なショッピングという姿勢は変わらないからです。
ちなみに、円安の影響によって、旅行先の優先順位として日本を上げたという訪日外客は全体の2割程度はいるようで、円安が旅行先選定のきっかけにはなっています。
不満点
コロナ前も今も、相変わらず、「キャッシュレス決済への対応」「日本語以外のコミュニケーション」に対する不満や不安は多いようで、訪日目的の一つである「体験」の魅力を削いでいるという感想が多いです。
一方、案内表示などの一方的な情報提示の多言語対応は、データからやや改善したように見られます。
様々なデータを分析しましたが、大きな違いは、やはり、中国人観光客がまだ戻っていないという実態であり、訪日マインド自体が大きく変わったというところはあまり見受けられませんでした。
あなたが、訪日外国人向けにサービスを提供しているのであれば、最もウォッチしておくべき情報は、最新版の海外のメジャーな旅行ガイドブックです。例えば、ロンリープラネットなどになるでしょう。
統計データは、所詮過去の話ですが、旅行ガイドブックは未来の行動を決める物になりますので、旅行ガイドブックに載っていることから着想を得て、サービスを考えるということが有効です。