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ポストコロナ:訪日外客の消費動向―爆買い、文化体験型旅行は本当か?

ポストコロナの訪日外客という視点で、本記事以前に、以下の2本をまとめています。

ポストコロナ:訪日外客数は戻ってきたのか?

ポストコロナ:訪日外客のマインドは変化したか?

 

今回はこれらを受けて、国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査」2023年1~3月期の2次速報データをとりまとめ、消費動向の実態についてまとめてみたいと思います。

ちなみに、集計データのみを見て書いていますので、もし、観光庁の報告書と全く同じ事を書いていたとしたら申し訳ありません。

参照したのは、集計表「参考5 国籍・地域(21区分)別 費目別購入率および購入者単価 【観光・レジャー目的】」の、「娯楽等サービス費」と「買物代」のデータです。

この2つを見て、かつてから『訪日外客といえば』というテーマで良く目にしていた「爆買い」と「文化体験」はどうなったのかについて確かめたいと思う次第です。

 

まず、文化体験型旅行が増えているか否かはどうかを見てみましょう。

「娯楽等サービス費」に含まれている項目は以下の通りです。

見る限り、ここに費用を掛けていることは、文化体験を旅程に組み込んでいると見て良いと思われます。ただし、当然ながら体験に費用が掛からない施設や催しもあるため、その点はこの統計だけでは見えないところではあります。

回答者全体の58.8%が支出しており、購入者の単価は16,444円でした。
2019年1-3月期の全国籍・地域では、購入者単価10,923円、購入率46.2%でしたので、文化体験のニーズは確かに増えているように見えます。

しかし、詳細の項目を見ていると、かなり偏った状況が窺えます。

「テーマパーク」と「美術館・博物館・動植物園・水族館」は購入率が20%を超えて「娯楽等サービス費」の中ではトップであり、他は全て10%未満の購入率に留まっています。
「現地ツアー・観光ガイド」の利用はわずか購入率8.1%で、「買物代」の「民芸品・伝統工芸品」を見るとこれも購入率7.1%と低い数値であり、文化といっても、日本の現代文化に寄っているようにも推察されます。

また、「舞台・音楽鑑賞」「スポーツ観戦」「ゴルフ場・スポーツ施設利用料・スポーツ施設利用料」は1%前後しかなく、2019年と比べても全く増えていません。
文化体験といってもかなり偏りがあり、日本の伝統的な文化の大半には、お金が十分落ちていないと見ることもできる結果になっています。

 

次に、爆買いは今どうなっているのかについて見てみたいと思います。

買物代に含まれている項目は以下の通りです。

爆買いと言えば、中国。まだ中国の方はほとんど訪日できていないのですが、どうなのでしょうか。

訪日外客の圧倒的な主要目的である「買い物」は健在。98.1%とほぼ全員がショッピングを楽しんでいます。

2019年1-3月期と比較すると、全国籍・地域で、購入者単価53,577円から減少していますが、アンケート結果を構成する中国人比率が圧倒的に少ないので、むしろ『2019年時点より爆買いされるポテンシャルは高い?中国人が訪日したらもの凄いことになるのでは?』と言っても良い結果かと思います。

調査対象国と地域の内、ドイツ、イタリア、ロシアを除く全てで、2019年1-3月期比で購入者単価が上昇し、シンガポール、フィリピン、ベトナム、アメリカの購入者単価は急激な上昇となりました。
ただし、この背景は、為替(円安)が大きく影響している物であり、母国で買うより安いからという背景が大きいものと考えます。なぜならば、急激な上昇を遂げている国の背景には、ブランド品・時計などの宝飾品・宝石貴金属類の購入率の上昇および購入者単価の上昇が大きく影響しているためです。これらは、日本のオリジナリティはあまり無い分野ですので。

かつての爆買いの象徴であった「電気製品」の購入単価が伸びていない点から、中国人の訪日が増えることで、このあたりがどう変わるのかは(コロナ禍以前に戻るのか)注視が必要です。

円高に振れた瞬間、訪日外客の消費が一気に落ち込む可能性が十分に見て取れるデータです。

 

以上、訪日外客の戻りが堅調に推移する中でも、気になる点についてまとめてみました。

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