「訪日ビジネス」と言った場合に、本音として「西洋人の訪日外客」という声をよく聞きます。
もちろん、アメリカからの訪日客は、以下のグラフの通り、政府主導の施策に反応して、東日本大震災以降、年々増加しております。
訪日アメリカ人推移グラフ
(出典:JNTO 国籍/月別訪日外客数資料から集計。2017年については、2016年月別傾向から推定試算。)
2016年は1,242,719人、2017年は推定140万人強です。しかし、一方で訪日外客の全体の伸び率と比べると、以下のグラフの通り、延び幅は小さいのも事実です。
訪日外客数全体の伸び率と訪日アメリカ人の伸び率グラフ
(出典:JNTO 国籍/月別訪日外客数資料から集計。)
えんじ色破線のグラフは訪日外客数全体。比較のために総数の差を外して、訪日アメリカ人(赤線グラフ)数と高さを寄せています。黒破線は訪日外客の平均推移、黒実践は訪日アメリカ人の平均推移を示しています。
訪日外客として総数や伸び率以上に欧米人を重視する傾向がある店舗の実際の意見には
「英語は他の言語に比べて対応がしやすい」「マナーや習慣が日本人のそれに近い」「ノーショー(連絡のないキャンセル)が少ない」
といった、接客実態を反映したものが多いです。
今回のテーマは、もちろんアメリカ人を迎えるうえで、どのような商機があるのかを紐解くことが目的ですが、
果たして、その他の国からの訪日外客に比べて、対応しやすく、また、お金を使ってもらえる存在なのか?について考察したいと思います。
アメリカ人は日本のことは知らない
訪日ビジネスを考える 訪日中国人を知る(1) でも取り上げました定番データ、日本政府観光局(JNTO) 訪日外客数と国土交通省 訪日外国人消費動向調査データを掛け合わせ、訪日アメリカ人の都道府県別訪問客数を計算すると以下の様になります。
2014年の訪日アメリカ人891,668人の都道府県別訪問率も計算し並べ、増減1%以上の都道府県をそれぞれ青字、赤字としましたが、この表をまじめに見てはいけません。お気づきでしょうか?
注目すべきは1位の千葉県。2014年の数値、こんなはずはないのです。転記ミスではありません。「2014年までは成田空港が千葉県だと知らなかった。」(2015年は80%を超えていますし、2013年は10%程度です。)ということを示しています。
※ヒアリングの実態を知りませんので、単純に聞き方(2014年までは発着空港は訪問地ではないということがあったのかもしれません。)の問題という可能性もあります。
しかし、※印の可能性を勘案しても、私の経験と照らし合わせて言えるのは「アメリカ人は日本のことを良く知らない。
というよりも、アジア人は日本のことを知り過ぎている。」ということです。
2015年以降、さすがにアメリカ人も「成田空港は千葉県。東京ディズニーランドも千葉県。」ということが分かってきたのかもしれませんが、有名な大都市近郊の地域や施設以外は、まだどこに所在があるかを認識してもらっているかは怪しいです。(当社の他の著者も、都道府県の索引は外国人に有効ではない旨のコラムを執筆しています。)
千葉県と逆のパターンで、神奈川県は比率だけではなく訪問数も2014年比で純減しているのですが、これは「本当は増えているが、神奈川県と認識していない」のか「実際に減っている」のかは判然としません。(どちらにしても、神奈川県にとってあまり良い傾向ではないですが。)
何故このようなことになっているのかと言えば、「アメリカと欧米と比べて住所の法則性が違う」「都市間の距離が違う」など様々ありますが、一番は、メジャーな観光雑誌であるLonely planetに記載されている日本の地域索引が、(日本人からすると)かなり雑であることが原因なのではないかと思われます。
総じて、訪日アメリカ人客は、事前情報にかなり偏りがあるということです。
この偏った先入観を理解して対応しなければならないことを念頭に置く必要があります。