CJコラム

世界に響く英語Webサイト構築術|第1回 翻訳だけでは届かない:文化を伝えるローカライゼーション戦略

 

目次

  1. はじめに:翻訳とローカライゼーションの違い
  2. ハイコンテクスト vs ローコンテクスト文化
  3. 言葉の壁を超えるための「ローカライゼーション思考」
  4. トーン&マナーは「文化の距離感」
  5. 英語にも方言がある?:地域バリエーションの罠
  6. 翻訳のその先へ:プロフェッショナルの関わり方
  7. まとめ:文化的共感こそ最大の武器

 

1.はじめに:翻訳とローカライゼーションの違い

「翻訳」と「ローカライゼーション」──この2つの言葉はしばしば混同されますが、実は役割も目的も大きく異なります。翻訳は、元の言葉の意味を別の言語に置き換える作業。一方でローカライゼーションは、その言葉が使われる「文化的文脈」ごと移し替えるプロセスです。

たとえば、日本の企業サイトにおける「社長挨拶」。これは、日本文化の中ではよくあるコンテンツですが、英語圏ではむしろ“トップの個人的メッセージ”よりも“会社のミッションやバリュー”を前面に出す方が好まれます。つまり、単に言語を訳すだけでは、意図が正しく伝わらないどころか、違和感を与えることすらあるのです。

本稿では、英語圏のユーザーに「届く」表現を実現するために必要なローカライゼーションの考え方と実践ポイントを解説します。

2.ハイコンテクスト vs ローコンテクスト文化

日本は「ハイコンテクスト文化」と呼ばれ、会話の前後関係や人間関係、状況といった背景情報(コンテクスト)に強く依存しています。「言わなくてもわかる」「空気を読む」といったコミュニケーションがこれにあたります。

対して、アメリカやイギリスなどの英語圏は「ローコンテクスト文化」。言語自体が情報の主要な伝達手段であり、明示的に伝えることが求められます。曖昧さや婉曲表現は、かえって誤解や不信感につながる場合もあります。

たとえば、日本語の「よろしくお願いします」という言葉は、コンテクストによって意味が変わる万能表現ですが、英語に直訳することはできません。文脈に応じて、次のような表現を使い分ける必要があります。

このように、文化的背景を踏まえた翻訳・表現が求められるのです。

3.言葉の壁を超えるための「ローカライゼーション思考」

ローカライゼーションとは、単なる翻訳作業ではなく、「現地の人が自然に感じられる」表現に最適化するプロセスです。製品名やスローガン、ボタンラベル、さらには画像や色使いまでも含まれます。

例1:「こだわりの技術」

例2:「安心・安全」

また、宗教観やユーモア、社会常識なども文化によって異なります。ローカライゼーションは「翻訳」ではなく、「文化変換」の作業と捉えるべきです。

4.トーン&マナーは「文化の距離感」

日本語では丁寧語や謙譲語を多用し、控えめで礼儀正しい表現が好まれます。しかし英語圏では、明快で自信に満ちた表現が信頼を得る鍵となります。

例:

さらに、BtoB/BtoC、若年層/高年齢層、専門職/一般消費者など、ターゲットに応じて「フレンドリー」「プロフェッショナル」「カジュアル」「フォーマル」などのトーンを使い分けることが重要です。

文章のトーンに一貫性がないと、ユーザーに混乱を与えたり、ブランドの印象を損ねる可能性もあります。ローカライゼーションは「誰に語りかけるか」を常に意識して行うべきです。

5.英語にも方言がある?:地域バリエーションの罠

「英語=世界共通言語」と思われがちですが、実際にはアメリカ英語、イギリス英語、カナダ英語、オーストラリア英語など、語彙やスペル、言い回しに明確な違いがあります。

たとえば:

意味

米国英語

英国英語

color

colour

休暇

vacation

holiday

エレベーター

elevator

lift

ターゲット市場に合わせて言語バリエーションを選ぶことで、ユーザーに安心感を与え、親しみを持ってもらえます。

理想は、言語選択機能や地域別サイトを設け、ユーザーが自分に馴染みのある英語を選べるようにすることです。

6.翻訳のその先へ:プロフェッショナルの関わり方

ローカライゼーションの成否は、誰が翻訳を担うかにも大きく左右されます。

自動翻訳や低価格翻訳サービスだけに依存すると、ブランドのメッセージ性や信頼性が損なわれるリスクがあります。

グローバル展開においては、翻訳を「コスト」ではなく「投資」と考え、適切な人材にしっかりと予算をかけることが求められます。

7.まとめ:文化的共感こそ最大の武器

英語Webサイトを「翻訳」するだけでは、ユーザーの心には届きません。

文化を超えて伝えるには、言葉以上の工夫が必要です。そしてそれは決して特別なことではなく、「相手に理解してもらおうとする気持ち」から始まります。

 

次回は【第2回】
「文化に寄り添うUXデザイン:信頼と共感を育むために」をお届けします。

デザインや色、画像の選び方がどれほど“文化”と直結しているかについて一緒に掘り下げていきましょう!

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