実はよくわかっていなかった言葉たち~その①「琴線に触れる」~
どこでどう間違えてしまったのか、本来の意味を、なが~~いあいだ間違えたままの意味と思っていたため、今更アタマのなかで正しい意味に置き換えてみても、先に間違って使っていた意味のほうが浮かぶせいか、常にネガティブなイメージがつきまとう。。。
皆さんは、そんなあんまり使いたくない言葉や慣用句ってありませんか?
先日、英文のタグライン開発の案件があって、担当コーディネーターから提出前のタグラインについて「一応見て欲しい」と言われて提出前に確認していました。いつものようにわかりやすい言葉で英文の意図を説明しているなかで、「琴線に触れる」という言葉に目が留まってしまったのです。
「琴線」は琴の弦から奏でる音、つまり心の奥底に染み渡ること、感動をおぼえることに喩(たと)えているので、「琴線に触れる」とは、本来、ステキなことや物、出来事に触れて感動をおぼえることを意味する言葉なのですが、コーディネーターは英文タグラインが感情に染み入るような意味で正しく説明していたのに、なんと私はこれを「逆鱗に触れる」とごちゃまぜにして反対の意味と思っていた時期があったのです。
「逆鱗」とは竜のあご下にある一枚の逆さに生えたうろこで、このうろこに触れると普段は大人しい龍が怒りだし、必ず殺されるという伝説から、天子の怒りを買うことを「逆鱗に触れる」と言うようになり、現在では上司や先生など目上の人の激しい怒りを買う意味で使われるようになった言葉です。私はそこからさらに発展して「龍の髭をなでる」「虎の尾を踏む」といった類語と同様、地雷を踏むかのような対義語とずっと思っていたのでした。
でも、どうやらそれは私だけの話ではなかったみたいなんです。
文化庁の平成27年度「国語に関する世論調査」においての結果によると、16~19歳のなんと52.4%が「琴線に触れる」という慣用句の意味を誤用していて、16~19歳で正しい意味で使っている人は、28.6%しかおらず、さらに全体でも、正しい意味で使っている人は38.8%。31.2%もの人が「怒りを買うこと」の意味で誤用していたのです。
つまり世の中の3人にひとりは、私のように間違った意味のままで誤用しているのです。
もし、お客さんや目上の人に「あなたの言葉は、私の琴線に触れました」と言われたら、うのみにしないで、そっと尋ねてみたほうがいいかもしれません。
「あの、もしかして、怒ってますか?」と。