CJコラム

YOUは何しに日本へ? ~追加情報を読み取ること~

「YOUは何しに日本へ?」
某テレビ番組の日本語タイトルです。このタイトルの英訳はこうです。
「Why Did You Come to Japan?」

 この英訳の「You」と日本語タイトルの中に使われている「YOU」は同じ意味ではありません。
恐らく翻訳者以外はこのことに気付くことはないと思うので、そのことを説明したいと思います。

 まず、Youは「あなた」ではありません。
こう言い切ってしまうと、学校でYouは「あなた」だと習った人は違和感を覚えるかもしれないですね。

 Youは「あなた」でもあり、「君」であり、「お前」や「貴様」でもあるのです。
「あなた」と言う言葉にはYouには含まれていない情報、
つまり、その言葉を発する人と「あなた」と呼ばれている人との人間関係に関する情報が含まれているということです。

「あなた」と呼びかけられている人との関係は、「貴様」と呼ばれている人との関係より良好でしょうし、
「君」と呼ばれる人は年下か、会社等での序列が低く見られているのだろうと推測できます。
Youにその様な追加情報は含まれていません。

では、存在しない情報をどうやって訳すのか?
そこが翻訳者の腕の見せどころなのです。簡単に言ってしまうと文脈から読み取る、もしくは文脈に追加するのです。

「YOUは何しに日本へ?」と言う日本語タイトルに使用されている「YOU」には外国人という追加情報が含まれています。
それでも、Why Did You Come to Japan?と言えば、これは日本人に対しての質問ではないことが文脈から読み取れるので、英訳として問題ないのです。

辞書では同じ意味として扱われている言葉が、翻訳と同じように使用できないことはよくあります。
今回挙げた「You」のように、その文字にどんな追加情報が含まれるか、考えてみるとおもしろいかもしれませんね。

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