CJコラム

世界に響く英語Webサイト構築術|第6回 すべての人に届くサイトへ:グローバルアクセシビリティの実践

 

目次

  1. はじめに:アクセシビリティは“優しさ”ではなく“前提”
  2. 世界の標準「WCAG」と日本の「JIS X 8341-3」
  3. アクセシビリティ対応が求められる背景と法規制
  4. 実装で気をつけたい具体的なチェックポイント
  5. 色覚異常・視覚障害への配慮:色と形に頼らない設計
  6. 誰もが使えるナビゲーションと操作性
  7. まとめ:アクセシビリティは“すべてのユーザー体験”の質を上げる

 


  1. はじめに:アクセシビリティは“優しさ”ではなく“前提”

「アクセシビリティ」と聞くと、どこか“特別な対応”のように感じるかもしれません。でも実際は、そうではありません。

高齢者、障がいのある方、視覚や聴覚に制限がある方、色覚異常のある方─誰もがWebを使う時代に、アクセシビリティは“特別”ではなく、“前提”となる設計思想なのです。

特に英語Webサイトは、多様な文化・身体的背景を持つ人々がアクセスする場です。だからこそ、国際基準に則った設計が求められます。

  1. 世界の標準「WCAG」と日本の「JIS X 8341-3」

アクセシビリティ対応における国際的な基準は、W3Cが策定したWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)です。

WCAGの原則(POUR):

これらを満たすことが、すべてのユーザーにとって使いやすいWebの土台となります。

日本国内では「JIS X 8341-3」が使われますが、これはWCAGをベースにしたガイドラインであり、グローバル対応を考えるならWCAG 2.1(もしくは最新の2.2)準拠を目指すことが基本です。

🌐 例:アメリカではADA(障害を持つアメリカ人法)に基づき、アクセシビリティ未対応のWebサイトが訴訟の対象になるケースも増加中。

  1. アクセシビリティ対応が求められる背景と法規制

世界では、Webアクセシビリティが“法的義務”になっている国が増えています。

代表的な法律や規制:

違反があれば、罰則や損害賠償請求、訴訟リスクに直結します。

公共機関だけでなく、企業やECサイトでも対応が進む中、遅れていると「配慮がないブランド」と見なされる可能性もあります。

  1. 実装で気をつけたい具体的なチェックポイント

アクセシビリティ対応には、多くの技術的工夫が必要ですが、基本のチェック項目を押さえるだけでも大きな改善効果があります。

最低限チェックしたいポイント:

これらは特別なツールを導入しなくても対応可能な項目ばかりです。

  1. 色覚異常・視覚障害への配慮:色と形に頼らない設計

デザインにおいて多くの人が見落としがちなのが、色覚異常への対応です。日本では男性の20人に1人が何らかの色覚特性を持つとされており、海外でも同様の傾向があります。

配慮すべきポイント:

✅ ボタンの例:「保存」ボタンを緑色にするだけでなく、チェックマークのアイコンと文字を併用する

  1. 誰もが使えるナビゲーションと操作性

操作性の観点でも、アクセシビリティは重要です。

ユーザーが迷わないナビゲーションのために:

また、「文字サイズの調整がしやすい」「リンクがクリックしやすい間隔」など、高齢者や視力が低下している方にとっての可読性も重要です。

  1. まとめ:アクセシビリティは“すべてのユーザー体験”の質を上げる

アクセシビリティは、障がいのある方のため“だけ”の設計ではありません。

──つまり、すべてのユーザーの使いやすさにつながるのです。

グローバル対応とは、“世界中の誰にでも伝わる”Webをつくること。その鍵を握るのが、アクセシビリティというわけです。

次回以降は「番外編」として、3回に分けてお届けします。

初回は、「CMSと多言語運用」について。CMSの別や運用方法、翻訳について解説します。

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