CJコラム

英文キャッチコピー開発日誌 ― 日本人が陥りやすい英文コピー開発の落とし穴とは ―

「英文コピーライティング」は「和英翻訳」とどう違うの?どんな作業工程になるの?と思われる方も多いかと思います。改訂作業真っ最中の当社HPの進行を例に取り、ご紹介します!

開発与件

考慮点

まず、ネイティブライターとバイリンガルコーディネーターがアサインされ、ヒアリングを終えて、アイディア練りがはじまります。コピーが果たす目的や役割、クライアントの志向性などを踏まえて、いくつかのアイディアを提出します。

落とし穴(1) これってだめなの?!「英語×ウェブ」がボツになる理由

当初「英語×ウェブ」の数式スタイルをそのまま英語&グラフィックにして打ち出すアイディアが日本人スタッフから上がりました。しかし、ネイティブスタッフから「×(掛ける)」ではなく「+(足す)」であるという指摘が出て反対されました。

日本人の感覚では、「積」のほうが「和」より大きいため、その「相乗効果」の大きさを印象的に表現できると思い、つい「掛ける」にしてしまいますが、彼らネイティブから言わせると、2つ以上の要素が「合わさる」ときは「足す」であり、「掛ける」では何を意味しているのか分からないものなのです。 こういった感覚の違いは、日本人にとっては経験やノウハウとしてもなかなか蓄積できません。素直にネイティブに確認することが非常に重要です。

複数アイディアで、依頼者の志向性を探る

一回目の提出アイディア(たたき台)

※各案に日本語で解説をつける場合もありますが、今回は直感的な印象を大切にしたいという理由で敢えて解説はつけませんでした。似た印象のコピーにも、それぞれに意味合いと傾向があります。今回の場合では、図1のようにコピーの持つ傾向をあらわすことができます。

例えば、「communications」という単語は、企画~デザイン~コンテンツまであらゆる領域に対応できる印象を与えることができます。逆に「advertising」という単語は専門性が高い代わりに世界観が限定されるリスクもついてきます。 それから、「innovation」「expertise」といった単語では、直接的な訴求をしていることから伝わりやすさがあります。さらに「Winning solutions」という言葉を使ってお客様に提供できるものを前面に出せば、ベネフィット中心の訴求ができお客様に響くコピーへと変化します。 このようにアイディアを提出し、コピー制作を依頼するクライアントの好みや事業推進の方向性を、提示したコピーと照らし合わせてヒアリングする中で、追求すべき方向性をさらに定めていきます。

上記の中から選ばれたのは「Fresh web innovation. Creative English expertise.」でした。その選定基準と評価の意味を正しく理解した上で、要望に応じてさらにコピーを洗練させていきます。リズム感や韻も重要です。様々な形容詞、名詞の可能性を探りながら再構成していきます。

再提出案

第一候補

短い2文構成で、それぞれの出だしの”O”が良いリズムを生み出しています。短いがゆえ、パンチのある印象になります。

その他上記のコピーのバリエーション案

落とし穴(2) 説明思考に注意!!

的を射た良案がいくつか出てくると、逆に一案を選択できなくなったりしがちです。迷いながら、いくつかの案に行ったり戻ったりしているうち、最終的に、このような質問を多くの日本人からいただくことになります。実際に社内スタッフから受けた質問メールを、リアルな声としてそのまま紹介します。

Subject:純粋な質問

音感、キャッチからすると、第一候補の「Online innovation. On-target English.」はいかにもコピーという圧倒的な感じはします。一方、日本人からすると、研ぎ澄まされすぎて何も言ってない(何が強みなんだろう?となる)ようにも感じます。キャッチとしてはダラダラ書かない方が、メッセージとして強い、伝わりやすい、ということなのでしょうか? まぁ、確かにこう書いている本人は強いインパクトを感じてはいるのだけど・・・

こういう時は、依頼者からの意見をもとに、再度ライターとも協議をして解説(ここでは説得)をします。

同様に、実際のメールでの回答を抜粋します。

日本語であろうと、英語であろうと、コピー作りには共通点があります。

我々は常日頃から、同じメッセージ(情報)を伝えることができるならば、キャッチコピーは短いほうがインパクト(パンチ)があり、受取手の印象に残ると考えます。なぜなら、キャッチコピーは一瞬が勝負になるので、「読まなければいけない」コピーはではなく、「感じることができる」コピーが強いインパクトを生むからです。

また、要素を加えれば加えるほど、受取手にとって範囲を狭めてしまう可能性もあります。例えばですが、コピー案にある “Creative English expertise.” の”creative”を見た人は、「では技術コピーは苦手なのか?」と思ってしまう可能性もあります。つまり、訴求要素が増えるほど、訴求されていない要素がグレーな印象になる場合があるわけです。

その点でも、第一候補案の「Online innovation. On-target English.」の良いところは、on-targetというワードが、範囲を限定せずそれでいて「的を射た」ズバリ感を生み出し、想像を膨らませます。 言葉数少なく、何も言っていないようでいて、innovation や on-target という言葉で、駆り立てるべき想像を駆り立てているのです。

さて、どうでしょう。英文コピーライティングの、翻訳とは少し違った奥の深さが伝わったでしょうか。

実際の案件では、案件自体のスケールやお客様のご要望もケースバケースですので、上記の工程に一概に当てはめられるかというともちろんそうではないですが、おおむねの骨組みとしては以上のようなステップになります。

さて今秋、シトラスジャパンの完全リニューアルされたWEBサイトが公開予定です。香港出身のデザイナーによる、トレンドを取り入れつつも分かりやすく情報の得やすさを追求した洗練されたデザイン、ウェブチームによる、ユーザビリティとオモシロさを両立したユーザーインターフェース、そしてコーディネーションチームによる英文キャッチコピーを、みなさま乞うご期待ください。

最新5件の記事