紙媒体の制作/印刷における事故を防ぐには〜vol.3先祖帰り事故をどう防ぐ?〜
※このシリーズでは、印刷事故防止の取り組みや施策について紹介しています。
「先祖帰り」事故とは、チームで共同作業を行ったり、ファイルデータの修正を頻繁に繰り返すうちに、何らかの理由でファイルのバージョンが先祖帰り(古い状態)に戻ってしまう現象を指します。最終データを入稿したはずなのに、見本刷りの中にプリントミスを発見してしまい、頭の中が真っ白になった経験のある担当者の方は多いのではないでしょうか?
残念ながら、これらの事故は目視(校正)によるチェックだけでは完全に防ぎきれません。なぜなら、人の目=アナログが関わる限りそこにヒューマンエラーは必ず起こり得るからです。
結論を申し上げると、このような事故をより効果的に防ぐには、ファイルデータの修正バージョンをデジタルで徹底管理していくしか道はないように思います。
では実際、どのような管理手法があるのでしょうか?今回は、具体的な事例を挙げながら、その有効性について検証してみたいと思います。
管理方法その①:ファイル名を変更して保存
紙の制作現場でもっとも一般的なのは、「修正ファイルを日付時間ごとにリネーム(例:abc_20180101.ai)し、所定の場所に保管する」方法です。
手順がごく単純なため、短時間かつコストがかからないというメリットがあります。
ただし、複数の制作現場、複数のメンバーで分散して作業を行うケースの場合、厳密なルール(リネームの命名則や、保存場所、失念しないなど)を周知徹底させる手間やリスクが発生するため、注意が必要です。
管理方法その②:バージョン管理ツールの導入
一方、Webの制作現場ではGitHub*の導入が先祖帰り事故防止に一定の効果を上げています。
ところが残念なことに、GitHubは、IllustratorやPhotoshopなど大容量のバイナリファイルの扱いが苦手で、これらのファイルデータをメインに扱う紙の制作フローにおいては、今ひとつ有効ではありません。
*ソースコードなどの変更履歴を記録・追跡するための分散型バージョン管理システム
管理方法その③:オンラインストレージの活用
直近ではオンラインストレージ(クラウドサービス)を活用したファイル共有が最も利便性が高く、かつ効果をあげているようです。
大規模案件に起こりがちな複数の環境、大人数による共同作業も、ストレージに上げられたファイルにそれぞれがアクセスして更新していく、というごくシンプルなルールで運用することが可能です。さらに、オンライン ストレージを使う最大の利点はローカル環境との同期*が可能な点です。
クライアントアプリケーションをインストールすると、ストレージ上で共有された最新ファイルはローカルのフォルダ内に自動的に格納されるようになります。そのファイルをさらに更新して保存すれば、 ストレージ上とも同期されるなど、ファイルの最新バージョン管理が格段に楽になる仕組みです。
現在、オンラインストレージはDroboxやApple社のiCloud、Google Driveなど多くの企業が、容量や価格、セキュリティレベルに応じてさまざまなサービスを提供しています。かつては割高な印象が否めなかった有償版についても、異業種からの事業参入の攻勢を受けて、よりリーズナブルな価格帯**に移行してきているようですので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
*有償サービス。Dropbox, Inc.などが提供。
**参考:iCloudストレージプラン(2TB)1300円/月、DropboxProfessionalプラン(1TB)¥1,200/月払〜(2017年12月時点)
vol.1、vol.2と今回と3回に渡って印刷事故防止のシリーズをお送りしてきました。
これらの情報が少しでも皆さんにとって「印刷事故をなくすため」の改善策やアイデアに役立てていただければ幸いです。