「品質の高い、伝わる原稿を作るには」というテーマで日本語の奥深さ故の翻訳の難易度に触れましたが、そもそも皆様“翻訳者は何をする人なのか”について正しく理解されていますでしょうか?
「英語ネイティブ≠英文コピーライター」という記事で具体的に触れていますが、“日本語原稿を翻訳者に渡せば、後は良きに計らってくれる”という感覚で依頼をしては、絶対にいけません。
結論から言えば、『翻訳者は文章を忠実に翻訳先の言語に置き換える』ことが唯一の仕事です。
つまり、“現地の方に読みやすい文体にアレンジ”、“ニュアンスをくみ取って表現”、“日本語原稿を要約して翻訳”などを期待するのは、完全な間違いだと言うことを念頭に置いておく必要があります。
翻訳者を使う際には、最低限以下の様な点に注意を払って日本語原稿を用意しておく必要があります。
- 固有名詞は明確に示し、どう表記するかを指定しておく。
- 業界用語や特定の呼称は、対訳となる言葉を予め協議、指定しておく。
- 和製英語、日本語独自に解釈されてしまっているカタカナ言葉は、全て完全な日本語に置き換えてておく。
- 日本語原文に同じ事を表現している複数の文章があれば、1つにまとめる。
- 主語・述語・目的語の関係を明確にした文章にする。(日本語は主語を省略しても意味が通じるという、他の言語にはあまり見かけない特長を持つ、珍しい言語です。)
- “ここは上手く言い回しを考えてほしい“と思うところは、完全に排除しておく。
- データで原稿を渡す際には、文字化けしそうな機種依存文字は避け、予め、MacでもWindowsでも文字化けしていないことを確認しておく。
翻訳者に渡される情報が、日本語原稿以外に何もなければ、翻訳者は目の前に提示された日本語原稿を自分自身の経験と感覚に基づいて置き換えることしかしません。置き換えられないケースはほとんどないので、困って、あるいは、気づいて質問してくることは基本的にありません。
上記のようなことを踏まえ、さらに、可能であれば事前に原稿の問題点などを翻訳者も交えて協議した上で、翻訳にかかるという手間を加えることを強くお勧めします。
以上のようなことを準備せずに“良きに計らえ”と言っていいのは、相手がライターである場合だけです。翻訳者相手にこの言葉を使うと、高い確率で後悔する結果となるでしょう。皆様の企業、商品、サービスが、世界で正しく評価されることを心から願い、本記事を是非ご参考いただければと思います。