今回は第2章を中心に内容を深掘りしていきたいと思います。
(参考までに過去シリーズはこちら)
これだけわかれば大丈夫!「平成30年度版情報通信白書」まとめ Vol.1
これだけわかれば大丈夫!「平成30年度版情報通信白書」まとめ Vol.2
第2章 IcTによる新たなエコノミーの形成(市場)
この章では、主にICTを活用した新たな産業ビジネスの展望についてレポートしています。
目次
・ATMが街から消える!? ICTを活用した「X-Tech(クロステック)」の進展について
・ICT企業の海外進出
・まとめ
ATMが消える!? ICTを活用した「X-Tech(クロステック)」の進展について
まずはX-Tech(クロステック)とはなんぞや?から。
「X–Tech」とは
産業や業種を超えて、テクノロジーを活用したソリューション(ICT)を提供することで、新しい価値や仕組を提供する動き」のこと
(参考資料:総務省 平成30年版情報通信白書 第1部第2節 新たなエコノミーの形成)
今年の白書の中で、総務省はこのX-Techの進展について、一節丸ごと使ってレポートしています。
なぜ総務省がこれほどまでにX-Techを熱く語っているかというと、、、やはりそこから生まれる新しい需要に期待を寄せているからなんでしょう。これから日本が生き延びていくには(もはや伸長が見込めない)既存ビジネスに代わる新しい価値や仕組みを創りだすことが必須。X-Techは、現状の産業界に変化をもたらす起爆剤になる、と総務省は見込んでいるわけですね。
で、いま現在どのような異業種間の取り組みが進んでいるのかというと。。。
うーんなるほど。もっとも進行が早いのがFinTech(金融)ですね。
ちょっと気になって調べてみたのですが、、、
たとえば銀行をはじめとする、金融機関の窓口業務やATMでお馴染みの「手数料」。これは文字通り「人の手数」(保守やメンテナンス費用、営業マンや実店舗のコスト)への対価なわけですが、ここにもすでにIT化の波が押し寄せているようです。すでにAI(人工知能)を使って個々のお客様の資産に応じた運用方法やおすすめの株、仮想通貨などの情報を提供してくれるサービスも登場しているとのこと。なんだかすごいですね。
あと、われわれに一番身近なところでは電子マネー系でしょうか。
スマホアプリ(QRコード)での決済は他国に比べて日本は普及率が低いみたいですが、クレカやデビットカード、あと交通機関系のカードなんかはもう一般的ですものね。
ちなみに10年間の電子マネー決済額の推移はこちら。
見事な右肩上がり。さらに今後、AIの技術が広がれば、いずれ現金を持ち歩く習慣もなくなりそうですよね。(かつての公衆電話のように)ATMマシンが街から姿を消す日は、案外近いのかもしれません。
ICT企業の海外進出
ICTを使って新しいビジネスの形成をいそぐべき!、と総務省は今年の白書の中で猛プッシュしているわけですが、実はそれだけじゃ今のGDPは維持できないんだよ、、、つぶやいています。ちなみに今年度のGDP予測図を見てみると、、たしかに他国にくらべて日本はほぼ横ばい。
<主要国の実質GDPの経済規模の推移及び予測>
今後日本の労働人口が減少していくのは確実なので、限られた人材でより多くの富(GDP)を生み出すには、ICTの「輸出入」で外需を伸ばしていくことが絶対条件、というわけなんですね。じゃあその具体策はなにかというと、総務省が提示しているのは2点。
ずばり、ICT企業の海外M&A(企業合併・買収)と、インバウンドの促進です。
その1 ICT企業のM&A
まずはここ数年の日本企業から海外企業へのM&A金額の推移から。
<我が国ICT企業によるM&A金額の推移>
2014年度からこの3年、過去最高を更新し続けていますよ。(ちなみに2016年が大幅に伸びているのは、ソフトバンク社によるイギリス企業の大型買収の影響です)そもそもM&A金額がなぜこんなに伸び続けているかというと、多分「手っ取り早い」からなんでしょう。人も時間も限られた日本企業にとって、海外でイチから人脈やシステムを構築するよりも、伸び盛りの新興国の力を取り込んだり、すでにある先進国の技術を得る方が楽ですものね。
その2 インバウンドの促進
2020年オリンピックイヤーに向けて、官民一体となってインバウンド誘致に取り組んでいることはみなさんもご存じかと思います。では、ここ数年の外国人旅行者数(消費額)を見てみましょう。
<訪日外国人旅行客数及び訪日外国人旅行消費額の推移>
想像どおり、見事な右肩上がりですね。ちなみに昨年、観光庁は、「訪日外国人旅行者の受入れ環境の改善」を目的としたアンケート結果を公表しました。その結果がこちら。
<訪日外国人旅行者が旅行中に困ったこと>
なるほど、まだまだいろんな場面で改善が必要なんですね。
総務省はこうした課題をむしろICTビジネスを活性化させる「攻め」のツールになる!と、考えているようで、Wi-Fi整備・キャシュレス決済環境・多言語音声のシステム開発にICTを活用すべし、と前向きに記事を結んでいます。
まとめ
グローバル競争と労働人口の減少が加速的に進む中、今後日本が生き残っていくためには
・既存に代わる新しいICTビジネスの構築
・海外市場への積極的な展開
・インバウンド向け環境の整備とICTの活用
が重要、ということが良くわかるレポートでした。次回は来年へ。いよいよ第3章について深堀りしていきます。お楽しみに。
つづく
参考資料:総務省 平成30年度版情報通信白書 第2章 ICTによる新たなエコノミーの形成