夢のソーシャルメディアデビューの前に・・・ ~SNSと企業姿勢の望ましいあり方とは~
いまや企業のプロモーション活動において、すっかりトレンドになっているのがソーシャルメディア。インターネットの中核ともいえる存在で、個人のライフスタイルや企業のマーケティング活動において無視できない重要なメディアとなっており、多くの消費者に対して自然にアプローチできるツールとして、ソーシャルメディアは企業の間で普及し続けています。
ありがたいことに弊社にも数多くの企業様から問い合わせがあります。
「ソーシャルメディアの立ち上げを検討しているんだけど、、、」
「ソーシャルメディアを使って"何か"できないか?」
というようなご相談が多数です。
世の中の話題の中心がソーシャルメディアであり「そのコミュニティーの輪に入り、自社の認知度を高め、ファンを獲得したい。」という目的がありつつも、一方では競合他社が次々とソーシャルメディアを立ち上げる中で、「自社でも何かしなければいけないので、とりあえず・・・。」というように、企業の焦りにも似た感覚が蔓延しているのが現状といったところだと思われます。
■日本のSNS利用者は4,289万人(普及率45%)、2年後に1.3倍になる見通しも
ICT総研によると、2011年12月時点の国内ネットユーザーは9,510万人。そのうち、FacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)利用者は、45%にあたる4,289万人にものぼるそうです。普及率もさることながら、1年前に比べて1.2倍(毎月50万人ずつ)増えているという驚異的な結果であり、2年後の2014年末には、利用者はさらに1.3倍の5,643万人に達するという予測も発表されています。
参照元: 2011年12月27日 株式会社 ICT総研 SNS利用動向・広告活用状況に関する調査
こうしてみるとやはりソーシャルメディアは無限の可能性をもったタッチポイントで、"企業の取り組み方次第"で、今参入しておくことのメリットが十分あると考えられます。
ここであえて"企業の取り組み方次第"という表現を使ったのは、実は、この取り組み次第でソーシャルメディアが大チャンスにもなり大ピンチにもなる表裏一体の存在であると考えられるからです。
さて、ここで「表」の部分として1つの成功事例をご紹介しましょう。
■「無印良品」を展開する良品計画
よく引用される事例として、「無印良品」を展開する良品計画がある。今ではフェイスブックページ(フェイスブックでの企業ページ)の成功事例として引用されるが、成功に至るまでの多くの努力が背後にあることも忘れてはならない。フェイスブックをやったら、すぐに成功するといった単純なことではない。積み上げた努力が重要だ。 良品計画ではネットを使った顧客との共創の模索は、2001年にさかのぼる。もちろん、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアも存在しないときである。当時は、「ものづくりコミュニティー(現『くらしの良品研究所』としてリニューアル)」を設置し、生活者との交流によって、生活者視点の商品開発を進めていた。すでに、このサイトから「体にフィットするソファ」といったヒット商品も生んでいる。
現在開発中の「スマートフォンでも使用可能な手回し充電付きラジオ」も顧客の声に応えた商品づくりだ。東日本大震災以後のエコと防災グッズのニーズを巧みに捉えている。(中略)
ここでの良品計画の姿勢が重要だ。実店舗と同様に、ネット上でお客様の声を聴き、要望からニーズやアイデアを取り上げていく姿勢が活かされていることである。フェイスブックページを運営する「中の人」(=社員)も同社の実店舗での販売経験があることから、さらに具体的な商品化に持っていくノウハウがこのあたりにある。
良品計画の事例は、多くのネット上のファンを捉え、ソーシャルメディアによるモノづくりの枠組みを提供した好例である。
SNSでは、「利用者数」=「売上見込み」という安易な方程式は成立しないという事は、もうすでにみなさんもご存じかと思います。では、一体何を目的に活用するべきなのかということは、良品計画の事例を見ればもうお分かりでしょう。きっと、「当社なら、お客様とこんなやりとりができるに違いない」「お客様と一緒にあんな面白いことをやってみたい」と、アイデアも浮かんだのではないでしょうか。
■ソーシャルメディア上では、企業も「ひとりの人間」である
さて、利用目的の設定とは別に、SNS活用において、もう一つ大事なポイントがあります。ここで、先ほどとは逆の「裏」の例として、ある食品メーカーでの出来事を簡単にご紹介します。
この食品メーカーのSNSでは、掲載したある記事をきっかけに、このSNSが炎上してしまいました。SNSのように、企業側がすぐにレスを返す必要があるツールは、上司の決済など待てないために一担当者が誤った判断で記事を書き込むことも十分にありえるわけです。それは、人間ならば誰もが小さなミスをしたり判断を誤って行動してしまうのと同じといってもいいくらいに、当然の如く起こることと言えるでしょう。では、過ちを犯したときに、人はどう対応するでしょうか。誠意をもって謝罪するとか、誤解がとけるまで一生懸命対応する、それが「当たり前の行動」です。しかし、この炎上が起こった企業側は、その場の体裁を取り繕うようなコメントを掲載するという対応をとってしまったのです。そしてそれ故に、このSNSはさらに大炎上してしまったという事件がありました。
こうした対応一つとってもわかる事ですが、SNSという社会空間では、参加する人・企業は全て対等な関係です。ですから、お客様にお近づきになれる代わりに、お客様側にも「その企業の姿勢」が見えてしまいます。そこでの対応の一つ一つによって、状況が好転する場合もあれば、上記のように大炎上してしまうといったこともあり、誤魔化しなどもっての外なのです。先の例などは、まさに成功と失敗が表裏一体のメディア性質が、顕著に表れた結果と言えるでしょう。
■SNS利用は、企業姿勢を再定義するチャンスと捉えて
ソーシャルメディアを活用するということは、それ自体が目的ではない、と考えています。この新しいツールの使用をきっかけに、リアル・ネットを問わず「企業としてどういう姿勢でお客様と接してコミュニケーションをとっていくべきか?」「お客様とこれからどういった形で新たなコミュニケーションが取れるのか?」をまず考えることが重要だと思います。つまり「企業として顧客とどう向かい合っていくのか」ということをお客様の視点に立って今一度定義しなおすチャンスなのです。それが定まれば、企業の姿勢がお客様に前向きに伝わり、それを起点に企業ブランドが広がっていくはずです。
企業のお客様に対する姿勢の確立と、それを生かせる全体戦略が相俟ってはじめて、お客様の方を向いた一番良い形でのコミュニケーションが生まれ、SNSの活用も成功につながるのではないかと、私は確信しています。