あたらしい広告技術の実験場 第2弾 オンライン化とモバイル化の進む2012年アメリカ大統領予備選挙
先日スーパーチューズデー(予備選挙)をむかえたばかりの 2012年アメリカ大統領選は、前回の選挙戦と同様に、いよいよ最新鋭の広告テクニックの力を、候補者同士が見せつけるような流れになってきている。今回の「あたらしい広告技術の実験場 第2弾」では、モバイルとネットを用いた予備選挙の最新状況をお伝えしよう。
まず注目すべきは、今回、アメリカ大統領選の歴史上初めてモバイル広告が政治キャンペーンのツールとなったことだ。米国のモバイルユーザーの48%が今やスマートフォンを利用している(*1)という現実を考えると、こうしたツールの導入は必然だろう。しかしキャンペーン執行部は、モバイルツールのユビキタスな性質(いつでもどこでもユーザーがメディアに接触できること) に着目したというよりも、モバイル広告が有権者の特定のセグメントをターゲットにできるその機能性に関心を抱いたようだ。具体的な活用事例をあげると、共和党保守穏健派のウィラード・ミット・ロムニー氏のキャンペーンでは、モバイル広告ネットワークのJumptap社(http://www.jumptap.com/)から得られるユーザーの郵便番号情報をターゲット・アシスタンスとして利用し、モバイル広告を選挙区内で配信し多くの支持者に届けた。また、同じく共和党保守急進派のリック・ペリー氏のキャンペーンでは、小さな大学街に限定してメッセージを配信するというより細分化されたマイクロターゲティングの手法が追求されている。
そして、前回の予備選挙では、候補者がFacebookやTwitterなどのソーシャルネットワーク上で有権者を囲い込もうとしたが、今回は、プロモツイート、Facebook広告、そしてGoogle AdWordsといったターゲット・アドを利用し始めたことが目立った動きとしてあげられる。候補者は自分たちの名前を「キーワード」として買い押さえ、自分の名前がTwitterで検索されるごとにプロモツイートが表示されるようにした。候補者の流す広告は、オバマ大統領に関する典型的なネガティブニュース(ロムニー陣営によって主導)から、献金を募るためのサイト(共和党保守派のニュートン・ギングリッチ陣営によって主導)に至るまで、ウェブのあらゆるソースに付けられるようになっている。これらの利点はきわめて費用対効果が高いことで、特にプロモツイートは精度の高い狙い撃ちが可能なことに加え、ユーザーがクリックしたり、お気に入りに登録したり、返信などのインタラクティブなやり取りをすることで広告費が課金される無駄のない仕組みになっている。なお、アメリカでは現在、こうしてトレンドとなっているソーシャルメディア広告を展開するSocialitical社(http://www.getsocialitical.com/)のような企業が成長してきている。
一方、依然として選挙費用の大部分を占めるのはテレビコマーシャルでの露出であるが、こうした映像による広告効果を最大化するためにもオンライン活用が進んでいる。候補者やその支持者たちは、候補者が政治メッセージを語るコマーシャルと同内容のコンテンツを、YouTubeやHuluといった動画共有サービスにアップロードしている。先日サウスキャロライナ州で大きな論議を巻き起こしたショートムービー《When Mitt Romney Came To Town(ロムニーが町にやって来た)》は、同州で封切りする前にすでにネット上で公開され大注目を集めていた。オンライン上での映像大散布作戦は、特に効果を発揮する手法なのである。ちなみにどのような効果をあげたかというと、ロムニー人気が頂点に達しようとするまさにそのタイミングで、ロムニー氏をただの「貪欲な企業エリート」として揶揄したこの映像作品が公開・流布されたことにより、同州の世論は大きく動揺し、ロムニー氏は、1月22日にサウスキャロライナ州で行われた共和党候補指名争いで他の候補者(ギングリッチ氏)に勝利を譲り渡す結果となってしまったのだった。
大統領選は、11月6日に一般有権者による投票及び開票が行われる。この大統領選に見る最新の広告手法を巡る同シリーズの第3弾は、次回5月に掲載予定なので、ぜひお楽しみに。
*1 ニールセンのレポートより
http://blog.nielsen.com/nielsenwire/online_mobile/survey-new-u-s-smartphone-growth-by-age-and-income/
英文と和文は厳密な対訳になっておりません。
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参考サイト
◎ソーシャルメディアのターゲット・アド
◎When Mitt Romney Came To Town(ロムニーが町にやって来た)