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コラム

東京国立近代美術館 生誕100年 岡本太郎展

時代を超えて響く、熱く真っ直ぐなメッセージ

誰もが知っている、日本を代表する芸術家、岡本太郎。
タレントのような存在として世に名を知られすぎたため、芸術家としての業績を理解している人は多くないように思います。
私が美大に通っていた時も、岡本太郎よりは、当時流行だった、アンディ・ウォーホルとかキース・ヘリングの方を追っかけていました。岡本太郎は、何だか野暮ったく、泥臭いイメージだったんですよね。

岡本太郎が生まれて、今年で100年。
時代は巡って、岡本太郎の人間臭い、熱いメッセージが、今あらためて注目されています。岡本太郎が未だに多くの人に愛されるのは、個性的なキャラクターも一つの要因ですが、やはり、その「熱い魂」に惹かれるからでしょう。

その、多くのメディアで取り上げられ、注目を集めている、「生誕100年 岡本太郎展」を観に、東京国立近代美術館へ足を運びました。
平日の昼間にもかかわらず、思ったより人が多くてその人気に改めてビックリ。休日に行ったら、人気の作品は人だかりで見られないかもしれません。

さて今回の展示テーマは、彼のさまざまな「対決」が軸になっています。
芸術家というのは、世の中と戦うのが仕事みたいなものですから、改めて岡本太郎が何かと戦っていたと言われても、それほど驚きはありませんが、国家プロジェクトのテーマに真っ向から対決した、「太陽の塔」にまつわるエピソードは、迫力があります。

太陽の塔は、言わずと知れた大阪万博のテーマ館に、シンボルとして建設された岡本太郎の代表作です。戦後、高度経済成長を成し遂げた日本が、世界に向けてのビッグプロジェクトだった、大阪万博。そのテーマ館のプロデューサーに任命された岡本太郎は、「人類の進歩と調和」というテーマを真っ向から否定し、すでに設計が進んでいた丹下健三のテーマ館の大屋根に穴をあけるとんでもない塔を提案します。

「岡本太郎展」に先立って放送されたNHKドラマ、「TAROの塔」を見られた方も多いかと思いますが、展示会場でも、本人のインタビュー映像を含めた当時の映像を流していました。
関係者に太陽の塔のコンセプトをプレゼンする場面では、苦虫を噛み潰したような表情と、失笑に溢れている中、一人熱く太陽の塔のコンセプトを説明する姿に、岡本太郎の凄さを垣間見ました。

高度経済成長を成し遂げた進歩の象徴である近代的な建築物に対し、岡本太郎は、原始の生命の象徴であるこの太陽の塔を対峙させる事で、「進歩」や「調和」が本来どういうものなのかを考える事が出来るというような事を述べています。つまり、原始のパワーこそが進歩の原点であるというようなコンセプトだと私は解釈しました。ある意味、万博のテーマをしっかり咀嚼し、内容を完全に理解し、昇華させた完璧な提案だったのかもしれません。
かなりの逆風と批判を浴びながらも、自分の意思を押し通し、ついに高さ70メートルの太陽の塔を完成させ、大阪万博は、当時の日本人の6割が見に訪れるという、大成功を収めました。

振り返って現代。低迷する日本経済、信頼を失った政治、未曾有の大震災、、、、、。こんな時代だからこそ、閉塞感をぶっ壊してくれるような、岡本太郎のキャラクターが人々から求められているんでしょうね。
熱いぞ、岡本太郎!

太陽の塔は、俗っぽい芸術の象徴のように思っていましたが、改めてじっくり鑑賞してみると、実に美しく、艶めかしく、心に響く迫力を持っていました。
ミニチュア模型が欲しかったけれど・・・ちょっとお高いのでやめておきました。

我々は、商業デザイナーやクリエイターですが、岡本太郎の熱いハートを見習って、めげずに新しい企画、デザインを提案していきたいものです。
常に世の中に無い、新しいものを生み出す。
既存の価値観を壊しながら、人々が求める新しいものをクリエイトしていく、この事の重要性を改めて感じさせる展示会でした。

サービス精神旺盛な展示会で、最後に1人1つずつ、富くじのような二つ折りの紙に書かれた太郎の“メッセージ”をもらう事が出来ます。
私が引いたのは、【やろうとしないから、やれないんだ。】
・・・すみません!がんばります!

展覧会情報

◎生誕100年 岡本太郎展
会場:東京国立近代美術館
会期:2011年3月8日(火)~ 5月8日(日)
主催:東京国立近代美術館 川崎市岡本太郎美術館 NHK NHKプロモーション

 

 

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