ICT総研が発表した「2019年 モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」によると、2018年度のスマホアプリの電子マネー利用者は前年比29.6%増の1157万人に増加。QRコード決済の利用者は173.8%増の512万人におよぶ予測となり、特にQRコード決済市場が急成長した、「QRコード決済元年」となりました。
そこで今回は、QRコード決済の仕組みや普及の背景についてお話したいと思います。
QRコード決済の仕組み
QRコード決済とは、店舗での支払いの際にスマホのアプリなどでQRコードを表示する、もしくは店舗にあるQRコードをユーザーのスマホで読み取ることによって、決済を行うサービスです。ユーザーはQRコード決済アプリに、あらかじめクレジットカードや銀行口座を登録しているため、現金がなくても買い物が可能です。店舗側も、スマホやiPadなどの端末に店舗用アプリをインストールする必要がありますが、例えばクレジットカード決済をするために必要な読み取り端末に比較し、初期費用が抑えられることが大きなメリットです。小規模店舗にも導入しやすいと考えられます。
どうして急成長?
・政府がキャッシュレス化を推進
政府は「キャッシュレス・ビジョン」の中でキャッシュレス決済(※電子マネーなどQRコード決済以外も含む)比率を、2025年までに40%程度に引き上げることを目指し、将来的には世界最高水準の80%まで引き上げることを発表しています。
キャッシュレス・ビジョン:http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-2.pdf
なぜ政府がキャッシュレス化を推進するかというと、紙幣を発行するコストの削減や、2020年に開催されるオリンピックや、2025年の大阪万博により外国人観光客の拡大の対策などが理由に挙げられます。
・中国の普及率は98%!!
QRコード決済普及の背景を考えるにあたっては、中国での発展を抜きには語れません。日本におけるQRコード決済の利用率は6%程度、アメリカでは5%強と言われている中、中国での普及率はなんと98%と言われています。
私達日本人に考えられないかもしれませんが、中国では偽札の横行などで現金への信頼が薄いから、というのが大きな理由のようですが、東京の人口の約1%、外国人観光客の約1/4は中国人であることから、日本でも中国人消費者に対応するため、QRコード決済の対応店が増えていることは間違いないようです。
中国発症のQRコード決済サービス
ではここで、中国のPQコード決済サービスについて紹介しましょう。
中国ではアリババグループの「Alipay(アリペイ)」とテンセントの「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」が二大勢力となっています。
サービスを最初に開始したのはアリペイです。
しかし、日本でも有名なWeChatというメッセージアプリが決済機能として「WeChat Pay」を開始してから、WeChat PayはWeChatの既存ユーザーに背極的にアプローチを行い、今となってはアリペイと同規模のシェアを獲得しています。
Alipay:https://intl.alipay.com/
WeChat Pay:https://pay.weixin.qq.com
日本国内での、これからの動きは?
これら中国系のAlipay、WeChat Payはじめ、日本発祥のものではLINE Pay、楽天ペイ、大手携帯キャリアのNTTドコモのd払い、ソフトバンクとヤフーが共同出資した会社が運営するPayPayといったサービスが登場したQRコード決済市場。メガバンク3行も共通規格のQRコード決済の開発を発表するなど、今後もまだ何社かがサービス提供に名乗りを上げてくると思われます。
しかし、冒頭で紹介したように伸び率は高いものの、利用者数はまだまだ電子マネーに及びません。また、電子マネーからQRコード決済に切り替えるユーザーが急増するということも考えにくいと思います。理由は、電子マネーは画面を操作することなく読み取り端末にかざすだけであり、ユーザーの手軽さにおいては、電子マネーの方が優れているとも言えるからです。そういった意味からも、使える店舗が増えても、実際に使ってもらえるかは別問題です。
いずれにしても、2019年のQRコード決済の市場動向からも目が離せそうにありません。