CJ Column

コラム

感覚語・擬音語をどう訳す?「ふんわり」を伝える翻訳の創造力

日本語の広告コピーや商品紹介文では、「ふんわり」「じんわり」「ぱっと」などの感覚語・擬音語が頻繁に使われます。これらの表現は、読んだ瞬間に質感や温度、感情までを想起させる力があり、商品やサービスの“体験価値”を直感的に伝えるのに非常に効果的です。ときにわずか一語で、五感に訴える豊かなイメージを生み出せる、それが日本語ならではの強みであり、表現の魅力でもあります。

特に食品、美容、ライフスタイル商材のパッケージや店頭POP、Webサイト、SNS広告などでは、スペックでは伝えきれない微妙なニュアンスや使用感、情緒的な価値を表す手段として感覚語・擬音語が重宝されます。たとえば、「しっとり」「さらっと」「じわっと」「とろける」といった言葉は、商品の質感や使用感、さらには気分までをも連想させ、記憶に残る印象的な表現となります。

このような言葉は、消費者の感性に訴える強力なマーケティングツールであり、理屈ではなく感覚で選ばれる商品やブランドにとって欠かせない要素です。

 

では、これを英語や他の言語に翻訳するにはどうすればよいのでしょうか?

最大の課題は、こうした日本語独自の感覚表現に一語で対応する語が他言語に存在しないという点にあります。つまり、単語を置き換えるだけの“翻訳”では、原文が持つ空気感や魅力が伝わりきらないのです。

たとえば「ふんわり焼き上げたパン」と言われて、単に “soft bread” と訳してしまえば、原文に込められた「軽さ」や「口あたりのやさしさ」、「焼き立ての空気を含んだ感覚」といったイメージはほとんど伝わりません。それを “light and fluffy bread” や “baked to a soft, airy finish” という形に再構成することで、ようやく本来のニュアンスに近づけることができます。

このように、感覚語や擬音語の翻訳では、「何と訳すか」ではなく、「どのように伝えるか」が重要になります。当社では、辞書にある単語を単純に置き換えるのではなく、原文に込められた意図や文脈、さらには文化的背景まで丁寧に読み取り、ターゲットとなる言語や市場にふさわしい表現へと再構築することを大切にしています。単なる翻訳ではなく、伝わる言葉にする力こそが、私たちが提供する価値のひとつです。

 

単なる翻訳ではなく、“再創造(トランスクリエーション)”というアプローチ

感覚語や擬音語の翻訳には、従来の「正確に訳す」という枠を超えたアプローチが必要です。単語や文法の正しさだけでなく、「誰に、どう届くか」という視点を持って表現そのものを再設計すること。それがいわゆるトランスクリエーション(Transcreation)と呼ばれる手法です。

たとえば、「ふんわり」という一語でも、対象がパンなのか布団なのか髪の毛なのかによって、適切な英語表現は大きく変わります。light and fluffy が最適な場面もあれば、soft and voluminousgently puffed のような表現の方が、より正確にニュアンスを伝えられる場合もあります。文脈と対象物に応じて言葉を選び直す柔軟な判断力が求められます。

さらに、「ふんわり干したての布団」という表現を考えてみましょう。日本人にとってはごく日常的な言葉で、あたたかさや安心感、清潔さといった心地よいイメージを伴います。しかし、海外、特に欧米圏では「布団を干す」という習慣そのものが存在せず、ベッドは常設が当たり前という文化背景があります。
このような場合、fluffy beddingfreshly aired-out duvet といった表現に加え、「どんな感覚を伝えたいのか」「どのように伝えれば読み手に伝わるか」を踏まえ、必要に応じて情景や意図を補足することが重要です。

こうした文化的な前提の違いを理解し、単語だけでなく“伝えたい体験”そのものを別の言語と文化に合う形で再構成する工夫こそが、トランスクリエーションの核心です。

 

画像やビジュアルも翻訳のヒントになる

翻訳においてもうひとつ重要なのが、言葉だけで完結させないという視点です。
商品やサービスがどのように見え、どのように使われ、どのように感じられるのか。そのヒントは、テキスト情報だけでなく、パッケージデザインや商品写真、広告ビジュアルなど、視覚情報の中にも多く含まれています。

たとえば原稿と一緒に商品画像をご共有いただければ、「ふんわり」という言葉が示す軽やかさや、「じんわり」という表現に込められた色味や質感など、視覚的な要素を翻訳表現に的確に反映することができます。これにより、文章とビジュアルの両面から、読み手のイメージを自然に導くアウトプットに仕上げることが可能になります。

言葉と画像が矛盾せず、むしろ補い合う翻訳は、ブランドの世界観を一貫して伝えるうえでも不可欠な要素です。そのため、翻訳をご依頼いただく際には、可能であれば関連するビジュアル素材をご用意いただくことをおすすめしています。

また、デザインと翻訳作業を並行して進めるような短納期のプロジェクトや、制作途中でデザインが変わる場合でも、翻訳内容の再調整を柔軟に対応いたします。スケジュールや進行がイレギュラーなケースでも、まずはお気軽にご相談ください。翻訳とデザインが“共鳴する”成果物づくりを、私たちがサポートいたします。

 

 

 

R.W  コーディネーター

コラム一覧に戻る

お問合せ

以下のフォームにご入力の上、送信ボタンをクリックしてください。

企業名 企業名を入力してください
お名前 [必須] お名前を入力してください
メールアドレス [必須] メールアドレスを入力してください
電話番号 電話番号を入力してください
お問い合せ内容 [必須] お問い合わせ内容を入力してください

個人情報保護方針

個人情報の取り扱いについて

個人情報の取り扱いについて同意してください

ログインをすると、
会員限定記事を全文お読みいただけます。

パスワードを忘れた方へ

  • ログインIDを入力してください。
  • ログインIDを正しく入力してください。
  • パスワードを入力してください。
  • パスワードを正しく入力してください。
  • ログインID、パスワードが間違っています。


ログイン実行中

ログイン完了!ページを再読込します。