アメリカで歴史ある辞書出版社メリアム・ウェブスター社は、毎年末にその年を象徴する言葉”Word of the Year 2022”を発表します。日本の「今年の漢字」に似ていますね。
近年の言葉は以下の通り。
2019年 They (性別を特定しない中立的な代名詞)
2020年 Pandemic(パンデミック)
2021年Vaccine(ワクチン)
さて、2022年に選ばれたのは?
Gaslighting.
「ガスライティング」 ― あまり聞きなれない言葉ですね。
調べてみると、自分の利益のために相手にうそを教えたり誤解させて心理的に追い詰める行為を指すそうです。
語源は映画にもなった戯曲「ガス燈」(原題はGaslight)。映画では、ヒロイン(イングリッド・バーグマン)が夫の巧みな策略によって精神的に追い詰められていきます。屋根裏部屋で夫が秘密裏に悪事を働く間、家の前に立つガス灯がたびたび薄暗くなることを見たヒロインが不審に感じて訴えるのですが、夫は、それは幻覚であり彼女が正常な精神状態を失っていると主張します。こういう心理的虐待を「ガスライティング」と言うようになったのですね。100年近くたった現代、ネット上で多用されているとは驚きです。
”Word of the Year”の選定基準となるのは、辞書サイトでどの程度検索数が増加したかということで、Gaslightingは昨年に比べて18倍近くも検索が増えたそうです。
相手の言動をフェイクニュースや陰謀論など一蹴してしまう風潮は依然衰えず、真実を見極めるのが難しくなっていると感じます。それを助長するように、インターネット上では偽の情報を流布させる手口が巧妙化し、チャンネルが多様化していることが背景にあるとメリアム・ウェブスター社は指摘しています。
来年はもう少しハッピーな言葉が選ばれてほしいものです。