CJコラム

無意識に出るヘンな日本語~省エネ発言~

翻訳という仕事柄からか、何気なく聞いた日本語が、これって英語に訳せないんじゃない?と無性に気にかかることがあります。
今回は、そんな表現をひとつご紹介します。

 

野球の試合で解説者が 
「点差も点差ですし、…」

ある女性が
「年齢も年齢ですし…」

ある会議にて出席者が
「時間も時間ですし…」

 

テレビや日常会話でよく耳にしませんか?
こういった場面で話し手は、話していることの状態が芳しくなく、それはあなたもお分かりでしょうから、これから否定的な発言をしますが納得してくれますよね、という共感を相手に求めているようです。たいてい、ちょっと困ったなという遠慮がちな表情を浮かべながら。

アレもアレなのでねぇ…

 

この「〇〇も〇〇だから」という表現、非常に日本語的だと思いませんか?
以前「うなぎ文」についてのコラムでも触れましたが、その場で話を聞いている人が話し手の言わんとする状況を理解していることを前提にした、日本語特有の省エネ発言のひとつ、といえると思います。

 

長らく日本人である皆さんには、何を言わんとするかピンと来たと思います。
普段何気なく聞いたり話したりしていますが、その察する能力たるや、お見事。言語の範疇に収まらない、特殊能力の域に来ているのではないかとさえ思います。

 

しかしこれ、日本人どうしでは問題ないのですが、日本語に不慣れな外国人に対して話をするときには、気づかいが必要です。こういう状況をあなたもわかっているから、私がはっきり言わなくても察してくれますよね、というのは通じないので、常に、何を言いたいのかを口にすることがポイントです。冒頭の会話でいうと、

「点差も大きい(小さい」ですし」
「年齢も若くない(若い)ですし」
「時間も遅い(早い)ですし」

このように話すよう心がけると、コミュニケーションもスムーズになるでしょう。
それにしてもラクちんなこの表現。つい使ってしまいますよね。

 

「天気も天気だし、時間も時間だし、体調も体調だから…
 今日は行くのやめるわー。」

この状況を瞬時に理解できたあなた、相当の日本語マスターとお見受けします。

 

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