シンプリファイド・テクニカル・イングリッシュ(STE)の英語ルールは、文法やスタイルに一定の制限を与え、コンテキストに頼らない英語母国語話者以外の多言語話者の内容理解のための英語を目指しています。それらには、以下のようなルールがあります。
・2ワード以内で名詞を形成する
・1センテンスの長さは、手順書等で20ワードを超えない。説明文では25ワードを超えない。
・1パラグラフは、6センテンス以内にまとめる。
・スラングや業界用語の使用は避ける。ただし、専門用語は許容される。
・指示内容は、できる限り具体的かつ詳しく記載する。
・可能な限り、冠詞「a/an」「the」を正確に使用する。
・動詞は、シンプルな態である現在形、過去形、未来形の3つを使用する。
・能動態を使用する。
・現在分詞や動名詞を使用しない。(ただし、専門用語内で使用されている場合は、専門用語を優先し現在分詞や動名詞の使用を認める)
・連続した手順については、手順ごとに文を分けて記載する。
・警告や注意事項においては、行ってはいけないことを先に命令として記載し、例外的条件があれば次に付帯させて記載する。
ルール内容をみて気付いた方も多いかもしれませんが、技術資料やマニュアルでの文面を想定した技術英語のルールとなります。翻訳業界の主流となる技術翻訳の分野で、このシンプリファイド・テクニカル・イングリッシュが利用されているのはこうした背景があるからと言えます。
シンプリファイドテクニカルイングリッシュは、航空宇宙、防衛産業でのスタンダードとして端を発しました。(翻訳産業の世界ダントツナンバーワンは、軍事産業をメインクライアントとした某米国企業です)。こうしたことを背景としつつも、自動車、機械等の他の産業のドキュメントでも使用されていきました。
私たちが、企業のコーポレートサイトを制作する際には多言語翻訳が発生します。昨今は、英語を基軸言語としてグローバルサイトを制作する日本企業も増えてきています。複数言語でサイトを多言語翻訳するリクエストも多くあります。そこで一番避けなければならないことが「誤訳」です。
短い文章で明確に書くこと、相手にわかる文章を書くことといったシンプリファイド・テクニカル・イングリッシュのエッセンスは、誤訳というミスコミュニケーションを避ける一つの方法になりうるかもしれません。伝達内容をシンプルかつ正確に短くまとめる、こうした作業は昔からそのスタイルを変えつつ、試みられています。