技術が進歩すれば広告も進歩する。このコラムはアドテクノロジーのトレンドを追いかける3回シリーズの第2弾です。
■ 「顔認識」で広告を最適化する
大都市の賑やかなショッピングモール、バス停、空港といった場所にいると、私たちは知らぬ間に写真を撮られている可能性が高いことをご存知だろうか。これはいわゆる「ビッグブラザー」が私たちを監視しているというだけでなく、顔画像認識や顔認証技術(略して「顔認識」と呼ぶ)を利用して、私たちの顔の情報を頼りに、どうすれば我々の財布の紐を瞬く間に緩めさせることができるかを考える、大手広告業者たちの戦略がそこにあるのだ。
顔認識技術の応用は、SFや警察のハイテク走査線といったイマジネーションの世界だけのものだったが、現在ではデジタルサイネージやその他のマーケティングツールにおいて、急速な勢いで効果を上げるようになってきた。従来的な固定的広告であれランダム表示されるデジタル広告であれ、無数の通行人に対して「当たるも八卦」で広告を提示して販売に結びつけようとするのではなく、現在では広告主が、性別、年齢、関心度合い、そしてこうしたデジタルサイネージのそばにいる人物が醸し出す雰囲気などに合わせた広告を、自動選択して表示することが技術的に可能だ。
一方、我々にとっても都合がいいことがある。例えば、男性が最新のネイルアートデザイナーの誘いに煩わされることはないし、女性が髭剃り関連商品の広告を懸命に無視しようとする必要もない。加えて、もしあなたがお疲れ気味に見えていたとしたら、サイネージの画面には、先延ばしにしていた長期休暇を取得するのにうってつけの常夏のビーチが表示されることだってあるだろう。
対象が単に「顔か、顔でないか」を識別するだけの顔検出とは異なり、顔認識や表情認識はこれをはるかに超える先進技術だ。超高精度で顔そのものを識別するばかりか、顔の種類やタイプまでも認識可能で、この技術が整えば、広告主は広告を見ている人物が誰であるかということをより的確に把握でき、それにしたがって必要なコンテンツをぶつけることができる。
■ プライバシー懸念
だがプライバシーの問題によって、ほんの数秒という短時間で集められる自分たちの写真(画像)情報が、どのように使われ、その意図を超えてどのように利用されてしまうのかを心配する向きもある。既成のソフトウェアを使って行われたカーネギー・メロン大学による研究では、実験のために写真を撮られることに同意した被験者(学生)のうち三分の一が、Facebook上の写真と比較することによって人物を同定できたことが明らかになった。(http://www.heinz.cmu.edu/~acquisti/face-recognition-study-FAQ/)加えて、こうした被験者の個人的な興味関心事や社会保障番号の一部なども判明してしまうことが明らかになった。グーグルでは、スマートフォンで撮った人物写真をオンラインサーチに掛けて同一人物の別画像を検索できるというプロジェクトが存在したが、こうしたプライバシーに関わる懸念もあって、その一般使用を諦めざるを得なかった。これについてグーグルの役員の一人は「技術そのものは完成できたのですが、人々がこれを良い目的のために使うことができる一方で、非常に邪悪な目的のために利用できることも分かったため、その一般公開を保留にしたのです」と説明している。
Facebookでも、友達が画像に加えることのできるタグ機能が批判にさらされてきた。Facebookの利用者はデフォルト設定で有効になっているこの機能を自発的に無効設定にすることはできるものの、顔認識技術をもつ企業であるFace.comのFacebookによる先般の買収劇がいみじくも明示しているように、Facebookの経営陣がこのテクノロジーの利用を強化する態勢を採っていると見られても致し方ない面がある。
■ 世界各地での顔認識技術の応用事例
さて、顔認識技術の利用は、それをスゴいと思うか不気味だと思うかはともかくとして、もうすでにあちこちで現実のものになっている。ラスベガスでは、ホテル、カジノ、レストラン、バー、そしてその他の遊戯施設など、それぞれの利用目的の性質に合わせてメッセージをカスタマイズできる「スマートビルボード」というものを導入している。
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