CJコラム

Mobile Apps.で世界を制覇せよ ― プレゼンスを発揮するためのスマートなアプリ選択 ―

あるデータによれば、モバイル端末からのインターネットへのアクセス数が、PCからのアクセス数を間もなく抜くほどに増大しているという(*1)。既に中国では4億8500万人のネットユーザーがいるとされ、(これは日本とアメリカの人口を合わせた数より大きい)65.5%のアクセスが「モバイル端末」からだとされている(*2)。

インターネットに接続できるPDAやスマートフォンなどのモバイル端末が登場したことは、早くから携帯電話でネットブラウジングできていた日本人には当たり前のような出来事だったかもしれないが、これまで携帯電話はシンプルに通話機能中心であったような海外においては、相当大きなインパクトがある出来事である。そしてそういったネット接続可能なモバイル端末が世界中を席巻している今、そこで確固としたプレゼンスを築くことが、海外に向けて何かしら発信していこうという戦略を持つ企業にとっての、最大に重要な、喫緊の課題なのである。

そこであらためて考えてみよう。モバイルユーザーを取り込む際に、ネイティブアプリケーションまたはウェブアプリケーションのどちらが有効なのだろうか。

この問いに対する正しい解答は、1つではない。ケースによって異なるからだ。

ネイティブアプリケーションとは、モバイル端末にダウンロードするアプリケーションのこと。アプリ開発と言えば、このネイティブアプリを思い浮かべる人が多いことだろう。よりインタラクティブで魅力のある(深い)ユーザー体験を提供することができるのが特徴である。つまりアプリ開発時に端末に合わせてカスタマイズすることで、各機器の可能性を最大限に引き出せるということだ。
ネイティブアプリケーションは各機器内に存するため、オフラインでも使用が可能で、ウェブアプリケーションでは足かせとなるようなサイズ(容量)の制約がない。それゆえに機能の追加には制限がなく、複雑なグラフィック仕様も可能にする。モーションディテクション(動体検知)やカメラやGPSなど各機器にデフォルトで備わっている機能を活用したりもできる。また通知機能を採用して、テキストメッセージやアラートを出して自動的にユーザーに呼びかけることで、他のアプリ使用中であっても、彼らをアプリに呼び戻すことが可能だ。さらに、ネイティブアプリケーションは、アプリケーションの販売から、即座に収入を上げることができる。その後、このアプリケーションは無料アクセスまた有料のオンラインコンテンツとして利用できる。

ネイティブアプリケーションの最大の弱みは開発費にあり、通常のウェブアプリケーションよりもコストが大きい。異なるプラットフォーム(Mac, Android, RIMなど)に適した各ヴァージョンを制作する費用が製品投入とアップデートの際にかかってしまう。加えて、プラットフォーム上での試験運用やアップルストアからの承認などがあるため、サービス投入までに多くの時間がかかるのも痛いところだ。またアップルストアに何十万とあるアプリケーションの中から、めでたく発掘されるかどうかという点にも不安が残る。

一方のウェブアプリケーションは、HTML5やCSS3またはJavaScriptの進歩にもかかわらず、ネイティブアプリケーションほどの充実した環境は、残念ながらまだ提供できない。しかしながら、ウェブアプリケーションならではの魅力的な側面がある。それは主にコストと即時性である。まずウェブアプリケーションはネイティブアプリケーションほどのコスト(開発費や工数)がかからない。既存ウェブサイトのコンテンツを活かせば、すぐに展開が可能であるし、またアップデートの際にも新たなテスト運用やアップルストアからの再度の承認も必要ない。ユーザーに検索・発掘されやすいという点でも勝っている。ダウンロードは必要なく、ユーザーは単純にURLを入力するか検索をかけるだけだし、ネイティブアプリケーションのアイコンさながらにスマートフォンのデスクトップにブックマークしておくこともできるからだ。その他にも、ウェブアプリケーションの大きな強みとして、廉価なフィーチャーフォンから接続が可能であることも挙げられる。一方ネイティブアプリケーションはスマートフォンのみ対応可能である。

つまり、もしあなたがご自分のいる会社のウェブサイトを忠実にモバイルコンテンツに反映しつつ、フィーチャーフォンのユーザーも取り込みたいのだとしたら、開発費や更新費および工数の面でウェブアプリケーションが適していると言える。また、あなたの考えるコンテンツが、管理者であるアップルストアに不適切だと判断され、アクセスを拒否されるリスクを抱えているのであれば、ウェブアプリケーションを作成する方が安全であろう。もちろんコンテンツも自由に考えることができる。

このように、世界に開かれたモバイル市場でプレゼンスを確立しようと計画する際は、実行性やROI(投資収益率)だけでなく、自分たちのコミュニケーション手法とマーケティングのゴールを綿密に分析することが重要だ。日本のように先行してモバイルマーケティングを行ってきた優位性を活かしながらも、モバイル業界のトレンドにはグローバル視点でも敏感でないといけないだろう。
なお、最近開発されたツールではHTML5を利用することで、いわばモバイル向けのハイブリッドアプリケーションを作り編集すれば、ネイティブアプリケーション同様にアップルストアからリリースすることも可能である。

*1 米調査会社IDCのレポートより
http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS23028711
*2 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)「第27次中国互換網発展状況統計報告」より
http://www.cnnic.net.cn/dtygg/dtgg/201107/t20110719_22132.html

英文と和文は厳密な対訳になっておりません。
Japanese articles may not fully reflect English content.

最新5件の記事