駆け出しの発明家、インディーズのフィルムメーカー、フリーのカメラマンをはじめ、クリエイティブに携わる人々にとって、世に「傑作」を送り出すために必ず乗り越えなければならない壁がある。
それは、「資金調達」だ。
だが、とある新ジャンルのソーシャル・メディアを使えば、これら「ドリームプロジェクト」を実現させるための資金集めが容易になるという。幅広い個人投資者から、小額の資金を集める仕組みを用いた「クラウドファンディング」と呼ばれるそれらの新ジャンルSNSは、財団へのプレゼンや銀行への融資申し込みといった従来のプロセスを省略して、プロジェクト資金の獲得を可能にするプラットフォームだと言える。要するに、アーティストはここでより大勢の大衆に向けて直に作品をアピールし、制作のための資金を募るというわけだ。
アメリカで比較的人気のあるクラウドファンディングのサイトとしてKickstarter.comがある。ヤンシー・ストリックラー、チャールズ・アドラー、ペリー・チェンという3人のニューヨーカーが共同で考案したKickstarter(キックスターター)は、アート作品の制作資金を募る手段として2009年4月に立ち上げられた。以来、1万4,000以上の作品を取り上げ、40万人を超える支援者から資金を集め、約3,500万ドルという資金を調達している。今では、毎日平均80ほどのプロジェクトが紹介され、毎週総額100万ドルの資金を確保している。
Kickstarterの背景にあるアイディアは至ってシンプル。 アーティストは作品を紹介し、目標資金額を設定して、人々が貢献したいと思うようにひたすら売り込む。取引はAmazonによって管理され、集った資金は、募集期限(通常1~90日間)が過ぎるまで第三者に預託される。もし目標額に届かない場合は、集った資金は寄付をした人たちに返金されてしまう。つまり、目標額に届かないプロジェクトには一切資金は支給されないという仕組みである。
アーティストにとって非常に価値の高いサイトであることは言うまでもないが、投資家や起業家たちの間でもこのサイトは人気を得ている。一例を挙げると、今日までで最も高額な資金を集めたプロジェクトは、iPodナノを腕時計のように装着できるリストバンドの開発を掲げた一個人が企画したものであった。結果的には、目標額の1万5,000ドルを遥かに上回る、90万ドルという資金を、1万3,512人の提供者から、たったの3日間で集めたのだった。
その他の人気クラウドファンディングのサイトとしては、貧困を緩和するための融資を行うべく人と人とのつながりづくりを目的とした非営利団体のKiva.orgが有名。また、起業家と投資家を結びつけるGobignetwork.comなどもある。最近ローンチされたAhhha.comは、人気TV番組「アメリカン・アイドル」の手法を活用している。要は、紹介されるプロジェクトの中で、最も多くの票を投票者から獲得したプロジェクトのみ資金を得ることができたり、興味を抱いた投資家と接触できるという設定になっている。大量の個人を相手にするインターネットに特有な、言ってみれば「ゲーム感覚」で資金調達に挑戦できるユニークなサービスとなっている。