
AI Overviews(SGE)の登場により、検索行動は大きく変わりつつあります。ユーザーは従来のように検索結果を一覧から選ぶのではなく、最初にAIが返す要約を読み、そこで理解をほぼ完結させるという行動が当たり前になり始めています。
この流れが加速すると、企業がどれだけ丁寧に英語サイトを作っても、AIに引用されなければ、海外ユーザーの視界に入ることすらできない。これが現実になります。
前回までのコラムでは、AIに理解され「構造」 と 「英語表現」 について解説しました。
今回はさらにその先、AIが参照先を選ぶうえで最も重要となるE-E-A-T(専門性・経験・権威性・信頼性)*をさらに掘り下げていきます。
日本語サイトには豊富な情報が詰まっているのに、英語版だけが「パンフレットのように簡略化されている」というケースは非常に多いもの。しかし、AI Overviews の時代、この差は企業の存在感に直結します。
*E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)
■ 1. 経験(Experience):日本語サイトにしか「実績」がないという落とし穴
多くの日本企業では、導入事例・数字・実績は日本語にしか掲載されていないという構造的な問題があります。
しかしAIは、日本語サイトの数字や事例を自動で英語文脈に置き換えることはしません。
つまり英語サイトに事例がない企業は、AIから見ると 「実績のない企業」 に映ります。
企業にとっては“英語に書いていないだけ”でも、AIにとっては「存在しない情報」です。
- Before / After
- 成果の数値
- 導入プロセス
- 顧客属性(掲載可能範囲で)
こうした要素は、単なる翻訳ではなく英語版での情報再構築 が必須となります。
■ 2. 専門性(Expertise):日本語では伝わる「余白」が、英語では伝わらない
日本企業の英語サイトで最も起きやすい問題が、専門性が十分に英語で説明されていない という点です。
日本語では抒情的で抽象度の高い表現も意味が通じます。
しかし英語では、背景・結論・論理が明示されていない文章は「何をしている企業なのか特定できない」と判断されてしまいます。
例:
「新たな価値を創造します」
「未来に向けた挑戦を続けます」
これらは日本語では自然な企業表現ですが、英語にすると “何を、誰に、どう提供しているのか” が抜け落ちてしまいます。
AI Overviews は 具体的な専門性が記述されている英語 を優先して引用します。
つまり、英語版にも
- 技術の仕組み
- 専門的役割
- 業界内での立ち位置
- 詳細なサービス説明
を明確に示す必要があるのです。
■ 3. 権威性(Authoritativeness):外部評価を“英語で”見せる
権威性を示すには、企業自身ではなく 第三者からの評価 が重要になります。
日本語サイトには書かれていても、英語版では省略されているケースが多い情報:
- 国際認証(ISO 等)
- 受賞歴
- 行政や研究機関との共同プロジェクト
- 国内外大手企業との実績
- 技術論文・発表資料
これらは AI が参照先を選ぶ際に非常に強力なシグナルになります。
日本企業が見落としがちなのは、英語で書かれていない受賞歴は、AIには「存在しない」のと同じという点です。
■ 4. 信頼性(Trustworthiness):企業の「透明性」を英語で保証する
AI Overviews は安全性を第一に設計されています。
そのため、信頼性が不十分な情報は引用されません。
- 信頼性を構成するのは次のような情報です。
- 会社概要(沿革・所在地・役員)
- プライバシーポリシー
- セキュリティ対策
- 英語窓口の有無
- コンタクト情報の透明性
- 更新頻度(古い情報は低評価)
日本企業の英語サイトでは、「お問い合わせページが日本語のまま」「会社情報が簡略化されすぎている」といったケースが多く、これが信頼性スコアを大きく下げています。
AIに引用されるためには、「誰が書いたのか「いつ更新されたのか」 が明確であることが不可欠です。
■ 5. 日本企業の英語サイトは、「E-E-A-T の可視化」が最大の課題になる
E-E-A-T の4要素は、単に記事に記載するだけでなく、英語サイト全体で一貫して見えるようにする必要があります。
特に日本企業は、
- 日本語サイトが圧倒的に情報量が多い
- 英語版は「概要紹介」に留まっている
という構造が一般的です。
しかし AI Overviews 時代、その差は致命的です。
英語版に載っていない情報は、海外ユーザーに届くどころか AIの視界に入らない。
そして一度 AI Overviews がスタンダードになれば、ユーザーは「まずAIで要点を読み、必要なときだけリンクを開く」という行動に慣れていきます。
この流れが止まることはありません。
つまり、企業の英語サイトは「海外ユーザーに読まれる前に、AIに選ばれること」を前提に再構築する必要があります。
■ おわりに:E-E-A-T は「英語サイトの品質基準」から「企業競争力」そのものへ
E-E-A-T はSEOのテクニックではありません。
AI Overviews の時代では、企業の専門性・実績・権威性・透明性をどう英語で見せるかという、経営課題に近いテーマになります。
そしてこれは、単なる翻訳の問題ではなく、英語での情報設計・情報開示の問題 です。
日本企業が世界で選ばれ続けるために、E-E-A-T の「可視化」は避けて通れない流れになっています。
次回は、このE-E-A-Tをもう少し掘り下げた後編をお届けします。
