CJコラム

航空業界は飛行機がメインではなく、もっと重要なのは空港

2020年航空業界(旅客分野)の惨状」として、コロナ禍が当然直撃する航空会社の倒産状況に触れましたが、空だけではなく、地上からも悲鳴が上がってきました。

 

2020年10月27日、国際空港評議会(ACI)欧州支部は、『年末までに旅客数が回復しはじめなければ向こう数カ月間で200カ所近くの空港が破産に直面する』との見方を示し、各国メディアはこれを大々的に取り上げています。ちなみに、ACIは、500カ所の空港に関連しているので、その40%が破綻危機だと言っていることになります。

その200カ所の多くは、小規模空港(日本で言えば、北海道・東京・愛知・大阪・福岡・沖縄圏を除く地方空港あたり)ですが、そもそもヨーロッパの空港はどこも債務が多く(ヨーロッパだけの事ではないですが)、正直大小関係なくまずい状況にあります。
仮にACIが言う200カ所の全てが破綻すると、直接的には少なくとも300億ユーロ(推定)以上の債務が回収不能に陥り、空港の従業員数約277,000人(これはAIC発表数値)が職を失います。
当然、飛行機は発着率する場所がなくなるわけですから、航空会社も全滅することになります。
運輸にこうした事態が発生するということは、当然ながら全ての産業に対して多大な影響があるわけでして、1つの空港が破綻するというのは、航空会社が破綻するのとは桁が違う話になります。

 

空港が破綻すると非常にまずいことになるのですが、各国の状況を見る限り、このままワクチンや特効薬ができるまで、国境を絞りに絞っていられるかというとそうはいかないわけですし、事実、出入国は緩和の方向に向かっています。
となると、今が底として考えれば、ICAの警告は裂けることができるのでしょうか?

ところが、そうはなりません。
航空会社と空港は、その収入体系が異なるため、同じようで全く違う落ち込みと立ち上がり方をします。航空会社は、ものすごく簡単に言えば「飛べば収入がある」わけですが、航空会社も同じようで実は違います。航空会社は、結果として今が底で、これから回復していくことになるでしょうが、空港はそうはなりません。

 

一般人の感覚としては、空港の収入は、飛行機の発着料がメインのように思われるかもしれませんが、それは空港における収入のごく一部、空港によってはほぼ無い(無料)というところもあるのが現実です。実際の収益の柱は、航空会社がその空港の格納庫に飛行機を置いておく駐機料や、(整備などの)ハンドリング費用なのです。

 

さて、現時点まで航空会社に起っていることについて整理すると、航空会社は飛行機が飛べなくなるので、収入がありません。となれば、当然費用削減をはかります。
当然その矛先は、何もしていない飛行機に向かうわけで、リースなどで調達している手離れが良い機体は手放すという判断をします。事実、今はそうしている最中です。
すると、航空会社はコスト負担が減って市況の回復に備えられますが、一方、空港は収益の柱である飛んでも飛ばなくても稼げていた駐機料を一気に失うことになる(なっている)のです。

 

「空が助かると地上が死ぬ」というこの図式ですが、重要度から考えれば、航空会社以上に空港を国が守りに行くのが当然の流れでしょうか。
これから先は、空港に関しての話題が増えていきそうな気がします。

 

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