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コラム

誤訳が起こりやすくなる原因とは ~大坂なおみ選手の記者会見より~

今年の初め、大坂なおみ選手の記者会見での発言が誤訳され、朝日新聞社とYahoo!ニュースが謝罪と訂正を行ったことは記憶に新しいと思います。あれは、記者も要領の得ない質問をしているので、答える大坂選手も可哀想ですが、大坂選手の回答も記者会見の受け答えに慣れていないのか、慎重になっているのか、とても訳しにくいものでした。
文字に書き起こすと下記のようになります。

「But I think for me...I don't...like, I get why people would be upset about it」

 

この文章の誤訳は「I get」=「理解できる」を「I don’t get」=「理解できない」と訳したことにあります。
誤訳 :「なぜ多くの人が騒いでいるのか分からない。この件についてはあまり関心が無いし、悪く言いたくない」
訂正文:「騒ぐ人たちのことも理解はできる。この件についてはあまり気にしていない。」

普通に動画で話を聞くと「I don't...like」の部分は日本語で言うところの「あのー」「うー」「えー」と行った間と同じで、大して意味のないものだと気づくことができます。
ただ、文字に起こしたものを読むと、急に解釈が難しくなってしまいます。誤訳の原因はそんなところにあったのではないかと思います。だからといって文字に書き起こさない場合は誤訳されないかというと、そういうものでもありません。

歴史的に有名な「事件」の一つに、ジミー・カーター合衆国大統領が1977年にポーランドで行った演説があります。
彼が言った「when I left the United States」という言葉が誤訳されたのですが、もともとは「アメリカを出発した時」といった意味ですが、「アメリカを見限った時」という意味で誤訳されたのです。

誤訳のもととなったのは「left」の解釈ですが、これは「leave」の過去形なので、「離れる」というのが基本的な意味となります。
ただ、「leave」には「見捨てる」という意味もあるにはあるのです。
普通に考えれば、合衆国大統領が自分の国を見限って、他国へ亡命するなどあり得ませんから、こんな突拍子もないカミングアウトをする訳はないと分かるかと思います。

この場合の原因は、どうやら通訳者にあるようです。
大統領の通訳をするぐらいですから、国でトップレベルの通訳者なのですが、専門がポーランド語ではなくロシア語と英語だったことと、合衆国大統領の通訳をするという緊張感が悪さをしたようです。

翻訳と違い通訳は、待ったなしのぶっつけ本番勝負です。
心理状態が結果に大きく影響してしまうので、このような失敗をしてしまったのかもしれません。

 

通訳も翻訳も異なる言語間をつなぐ仕事ですが、誤訳をする原因はそれぞれ違うところにあるように思えます。
通訳や翻訳を「される側」からすると、どちらも知っていたからといって避けられるものでもないのですが、「する側」からすると、いろいろと気をつけることはできそうですね。

T.N  コーディネーター

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