人間万事塞翁が馬
“にんげんばんじさいおうがうま” と読みます。
「人生の幸不幸は予測できないものだ」ということを例えたことわざです。
座右の銘とする人も多く、私も好きな言葉のひとつです。
人間=にんげんではなくて「じんかん」、つまりはヒトの世のこと、塞=とりで、翁(おきな)=老人のこと、つまり、“ヒトの世の中で起こることは万事(すべて)がとりでの中に住むおじいさんの馬のようなものである”と言う意味になります。
「淮南子(えなんじ)」という紀元前に中国で編さんされた思想書にことわざの基となった原文があるそうです。それによると・・・
昔、中国北方の塞(とりで)近くに住む占いの巧みな老人(塞翁)の馬が、胡の地方に逃げ、人々が気の毒がると、老人は「そのうちに福が来る」と言った。
やがて、その馬は胡の駿馬を連れて戻ってきた。
人々が祝うと、今度は「これは不幸の元になるだろう」と言った。
すると胡の馬に乗った老人の息子は、落馬して足の骨を折ってしまった。
人々がそれを見舞うと、老人は「これが幸福の基になるだろう」と言った。
一年後、胡軍が攻め込んできて戦争となり若者たちはほとんどが戦死した。
しかし足を折った老人の息子は、兵役を免れたため、戦死しなくて済んだ。
(出典『准南子』人間訓)
塞翁の馬を巡る【禍⇒福⇒禍⇒福】のお話しとなっているわけです。
「不幸が来たからと言って落ち込んでばかりいることはない、今度はきっと幸福がやってくる。幸福が来たからと浮かれてばかりでもいけない、禍福は予測ができないものだ」ということを伝えています。そのことから「塞翁が馬」の教訓が生まれたのだそうです。
これが英語の世界だと、まるでドラマのセリフのような表現となります。
Joy and sorrow are today and tomorrow. 今日の喜び明日は悲しみ
A joyful evening may follow a sorrowful morning.悲しみの朝の後に喜びの夕べが訪れる
今は新型コロナウィルスの猛威で世界中の健康生活が脅かされ、経済が停滞し、人類は歴史的な災いの真っただ中にあると言えます。でも、こんなこといつまでも続きはしません。
きっと新しい生き方や治療法がどんどん開発されて、後々大きな「幸福の基になるだろう」と私たちは強く信じて生きていきたいですね。
だって人の世は“万事塞翁が馬”のようなものなのだから。