客家とは、客家語を話す漢民族の一支流の集団です。
その活動範囲は福建省、台湾からベトナム、スリナムまで広範囲に渡り、移動習慣のある客家の人々は、世界中にその生活圏を広げています。客家という呼称の由来については、様々な説があります。「客」は中国語で外来者を意味し、移転や転居が多い客家の特徴と一致しています。(客家人である台湾の監督者侯孝賢は、映画『童年往事』の中で、客家人の孝君が幼いころに家族と台湾へ移住した話を描いています。)
放浪するジプシーのように、独自の文化、習慣を持つ客家人は移住先で好奇の目で見られることがあります。しかし、大人しく粘り強い客家人は、これまで多くの地域の文化や経済に深い影響を与えてきました。シンガポールの李光耀元首相やタイのインラック前首相も部客家人の後裔です。
物事を学び出世することを尊び、故郷を心に秘めて外の世界で戦い、時には疎外感や郷愁を味わう… 独特な個性を持つ他の民族と比べて、比較的目立つ特徴の少ない客家文化は、千年かけてゆっくりと客家人の生活の中で育まれてきました。
客家人は移動を続けて定住地を持たないジプシーとは異なり、どこかで安定的な集落を作って定住します。福建省の土楼(別称「囲楼」)は客家特有のものではありませんが、客家集落の代表的な建築様式とも言えます。土楼はドーナツ状の円形で有名ですが、方形や多辺形などもあります。
土楼の歴史は宋・元の時代(11~13世紀)まで遡ります。土を固めてできた分厚い土壁によって、土楼は守りやすく、攻めにくい防御性の高い城になっています。2008年には世界遺産に登録されました。
客家人は、中原地区の黄河の川辺に定住していましたが、その後南に移住した集団です。あっさりとした味付けが特徴である南方中華料理とは異なり、客家料理は中原料理の名残りを持ち、濃厚な味付けが特徴です。例えば梅菜扣肉(梅菜と豚バラ肉の蒸料理)、塩蒸し鶏などが有名です。
移住や戦乱により、客家人は保存しやすく持ち運びやすい乾物を好みました。例えば、干し芋やほし豆腐押し豆腐)。また、米粉と糯米で作る「ご飯もの(粄食)」も客家料理の代表料理です。日本の大福とタイのクエ(Kuih)少し似ています。
また、客家擂茶などもぜひ体験していただきたい伝統的な茶飲料です。そして、鮮やかな客家花布(客家の伝統的な花柄の布)はお土産としても喜んでもらえるでしょう。ちなみに、客家方言は古代中国語の生きた化石と呼ばれていますので、興味があれば聞いてみてください。