CJコラム

多言語版の制作の基本その5 ~最初につまずくと最後まで倒れる~

少々厳しいタイトルとしましたが、問題が翻訳のスキルや語学レベルではないことも多々ありそうです。私たちは急いで翻訳をお願いする際、ついつい「いつもどおりに」とか「細かいとこは見ておいて」とか言ってしまっています。誤訳とは、もしかしたらここからすでに始まっているのかもしれません。

過去のコラムで、翻訳、とりわけ多言語翻訳は伝言ゲームのようなものだと、実際の例で見てきました。厳密な文法の問題はさておき、日本語から英語、英語からフランス語へ翻訳していく際に生じた解釈の違いが、別の意味に伝わっていきました。
今回は、翻訳という作業のスタート地点を検証していきます。
翻訳をお願いする際には、翻訳元の原稿として原文を用意します。そもそも、この原文である日本語を正しい日本語で書けているか見直したことはありますでしょうか?

・誤字脱字はないか。
・主語は書かれているか。
・主語と述語は一致しているか。
・修飾語は明確か。

細かく挙げていけばもっとありますが、上記の視点は翻訳ではとても大事な点です。また、逆の視点で言うと、日本人が日本人に伝える文章では曖昧さに陥りがちな点でもあります。
誤字脱字ですが、日本語で「松」を「待つ」と誤った場合、英語も「pine」と「wait」で全く違ったものになってしまいます。

主語の問題も大きな問題です。以下の3人の会話で考えてみましょう。

A:「昨日は海に行ったよ」
B:「昨日はレストランにも行ったよ」
C:「いい休暇が過ごせてよかったね。」

なんの問題もない会話のように感じた方もいるのではないでしょうか。しかし、2つの事実解釈が可能だと気付いた方もいると思います。この違いが、翻訳解釈の違いと言われる点と言えます。
これは、日本語から英語での解釈違いのほか、英語からフランス語でもさらに解釈の違いが分かれてしまいます。

主語をはっきり言わなくても、関係性や周囲の言い方や聞き方から「察する」のが日本語の文化ですので、日本語が良い悪いということではありません。よく「日本語は曖昧なのでよくない」という知ったような事を言う日本人の言葉を耳にしますが、個人的には日本語が曖昧な言語とは、決して思いません。しかし、複数の言語を併記していく場合などでは、お互いの言語間で気を付けることがあるということです。

次回、具体的にどこがズレているのかを、検証してみたいと思います。お楽しみに。

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