CJコラム

翻訳会社アレこれ ~Vol.27 ○○さんからのご紹介その2「Nさん」~

先日「Nさんからのご紹介」ということで英訳のご相談をいただきました。

この「Nさん」、私にとっては同期ともいうべき方で、その出会いは新人時代までさかのぼります。これまで最も関わり合いの深い「キーマン中のキーマン」とも言うべき、懇意にしていただいているお客様です。
その方の紹介ともなれば自然と力も入るのですが、依頼を受けてほどなくして作業を担当しているスタッフたちからなにやら雑音が聞こえてまいりました。

最初は、当社の米国人ネイティブライターからで「日本語の原稿を見せて欲しい!」と。


当社のライターはもう30年以上も日本に在住していて、ご家族は全員が日本語をしゃべるのに、彼だけがカタコトに毛の生えたような日本語で、文章などはほんど読むことが出来ません。それなのに「日本語を見せろ」と言うときは、大抵コーディネーターの用意した下訳の内容が「理解できない」からなのです。依頼されている英訳は、外資系クライアントからの質問、制作業務や企業情報についての英文での質問に対して、代理店側が英語で回答すべく、日本語で用意した回答を英訳するというシンプルなものだったはずなのですが。。。

クライアントからの英文の質問は、いたってシンプルで分りやすいのに、英語のロジックからすると「ちっとも回答になっていない」そうで、これじゃあクライアントと「トラブルになる」これは「放っておけない」
そこで日本語原稿を機械翻訳で解読してライターなりにできるだけのことをしたいと言うのです。

皆さんもご存じの通り、機械翻訳は完全ではありません。


なんとなく言っていることを知るにはいいでのですが、重篤な誤訳を招く危険があり、これを元に英文リライトをするなんて、コーディネーターからすればたまったものではありません。ですので通常、機械翻訳は社内では禁止されています。私は急ぎ、担当コーディネーターにことの真意を確認したのですが、
「内容が難しい(のもありますが)というよりは、原稿に少々難があり、解釈を加えないと英語にできない箇所があって、そういった部分がライターには納得ができないのではないでしょうか」と説明を受けました。

 

なんだか急にややこしいことになって来ました。。

 

お客様の原稿に不明なところがあれば、確認するのはもちろんやぶさかではありませんが、それは日本語の意図するところや対象が不明だとか、事実関係が曖昧だとか、原稿の不備に対して聞くことは出来ますが、そもそも質問に対して原稿が答えになっていないとは、クライアント様ではない限り、とても言えませんし、こちらで勝手なことも書けません。それこそ責任問題になります。そんなことは誰でも想像がつくものですが、ライターからすれば何もしないほうが「責任問題になる」と思ったのでしょう。正義感に燃えるライターは私の目を盗んでわざわざシトラスジャパンの代表にまで直談判したようでした。

しかしここで足を止めているわけにもいきません。
コーディネーターもベテランなので、原案の回答内容や原案の意味に関する誤解などによって起こるかもしれない結果について、こちらで一切責任を取れないに状況に対して、一定の解釈を加えて英文を作することにしました。当方の解釈で大丈夫なのか、忠実に翻訳されていないかに見える箇所についても、納得を頂けるような丁寧なコメントを添えた当方の英文を一旦提出して、お客様の反応をお待ちすることにしたのですが、一方で当社のライターの心配も分からないでもありません。

日頃から贔屓にいただいている代理店様とクライアント様との契約が見直されるというようなこともあり得る話で、そうなると、こちらにも火の粉が及んで来ないとも限りませんが、もっと心配なのはお世話になっている紹介者の方に非が及ばないだろうかということです。
そこで、これはもう巻き込むしかないと、懇意にしていただいている紹介者のNさんに、言いにくいことをズバリ相談させていただきました。昔から多くの部下をかかえスタッフの相談役として有名な「Nさん」だけに、この手の調整役として逆にこちらから相談してみたところ、期待した通り、事態をよく飲みこんでくれたうえで、「Nさん」から担当の方へ話をしてくれたのです。
後日依頼者の方から、当方の解釈に対して、意図を伝わりやすくした原稿に変更したいと連絡がありました。
そしてその再納品もって、この仕事は終了となりました。


ほんの少しですがお役に立てたのかも知れません。
でもそれは紹介者が「Nさん」であったからでもあります。幾度となく紹介していただいて、助けていただいていますが、今回も大変お世話になりました。いつもいつも本当にありがとうございます。

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