It’s about people, not platforms. ―成功の鍵は「みんな」をその気にさせること―
日増しに深化するデジタルの世界で、私たちは新しいデジタルメディアを通して日常の出来事を共有するようになっている。そして、こうした新デジタルメディアが、従来のマスメディアによる広告宣伝に代わって、一人ひとりの購買決定をも左右する情報源として大きな影響力を持ち始めている。つまりは、品質のいい手頃な価格の製品を見つけたら、その製品を自らマーケティングする(=デジタルメディアを通じて知人にオススメする)のが、日々の楽しみになってきているわけだ。MySpace、Facebook、Twitterのような、気軽につぶやけるソーシャルネットワークが急速に普及したことによって、ごく普通の生活者の声が、ネット上ですぐ検索できるようになったし、さらにお互いにやり取りすることもできるようになった。
もはや無視できない「みんなの声」--なんと1日平均6500万回ものつぶやきが
この数はまさにその潜在的影響力の大きさを物語っている。いまや大人の10人にひとりはソーシャルネットワークを使い、自分たちのお気に入りの製品に関して情報共有している。例えば車の購入。購入経験がある人は、その後ネット上で平均20人くらいの人に自分の購入体験談を話しているという。そして、そういった体験者からのアドバイスの20%以上が、次の購入者の意思決定の「決定打」となっているという。
こうした新メディアの影響力は、AppleがiPad100万台を売りさばくのに1ヶ月しか掛からなかったことや、Facebookのユーザーが1億5000万人から5億人になるのに僅か15ヶ月しか掛からなかったことを見ても明らかだ。ソーシャルメディアは、ネット上での急成長分野であり、トラフィック量もこの1年間で2倍になっている。
インフルエンサーを味方に付けよ--より多くの情報をシェアするための必須条件
広告主も、自社ブランドの広告宣伝のために、大衆に大きな影響力を持つ「インフルエンサー」たちを巻き込んで、会話を盛り上げながら情報を拡散させる手法をとっている。ソーシャルネットワークにはそれぞれ特性的な機能もあるが、要はキーとなる「インフルエンサー」やそこでの人々のつながりを把握しきちんと舵取りをしなければ、どんな戦略も中途半端なものとなってしまう。それほどに「キー・インフルエンサー」たちはブランドイメージや購入決定に対して大きな影響力を持っているし、彼らの存在感こそがブランドの価値や販売動向を左右してしまうのだ。「キー・インフルエンサー」はたいてい自身のブログを持っているし、Twitterでは個人的に知り合いになることの滅多にない膨大な数のフォロワーを引き連れている。例えば、ハリウッドセレブのアシュトン・カッチャーが、460万人のフォロワーをつけているように。
進化する「ソーシャル」世界--《ユーザー体験》の意味が変わる
広告主は、宣伝内容に合わせて、各種「ソーシャルメディア」を使い始めている。もちろんその宣伝方法はソーシャルメディアの数だけ存在する。斬新なソーシャル体験をユーザーに提供するために、コンテンツ内容、制作物のクオリティ、双方向性のある仕掛け、ユーザーに考慮したデザイン戦略など、ありとあらゆる部分が再検討され進化を遂げている。
以下にいくつかの実例をあげよう。
■「Pepsi Refresh Project (PRP)」 http://www.refresheverything.com/
ペプシが2010年に始めたキャンペーン。ソーシャルメディアの取り組みに相応しく、参加者の居住するコミュニティや州、あるいは国の地域振興につながるようなアイデアを考えた個人・企業・NPOに対してのその資金となる2000万ドルの賞金が支払われるもの。大勢の参加者を集め、地域貢献に寄与したペプシのブランドイメージも向上している。
■「We're All Fans」キャンペーン http://www.wereallfans.com/#/LadyGaga/
レコーディングアカデミーとTBWA/Chiat/Day Los Angelesがコラボした、第52回グラミー賞の時の先進的な広告キャンペーン。視聴率低迷を脱する策の一つとして行われたこのキャンペーンでは、熱狂的なファンがアーティストに関する自作のテキストや動画を投稿するもので、文字通りファン自らがアーティストの広告担当となる仕組み。デジタル時代の音楽ファンが作りだしたインパクトの大きさを改めて示すものとなった。投稿データを利用したサイトのデザインセンスにも注目が集まる。
■「Keep A Child Alive/Digital Death Campaigne(子供たちの生存のために/デジタルデス・キャンペーン)」http://www.buylife.org/index.php
2010年の世界エイズデー(12月1日)からスタートしたソーシャルならではの募金キャンペーン。膨大なフォロアーを有する世界有数の著名人たちが、ネット上で「仮想的な死:デジタルデス」を演じ、ファンたちが率先して寄付を行い彼らを助け出すことで、現実の世界で助けを必要としているアフリカやインドの数百万のHIV感染者に救いの手を差し伸べるという仕組み。「自分を生き返らせて!」とソーシャルネットワークに「最期のメッセージ」を残した著名人に対して10ドル程度の募金をし、それが積り積もって100万ドルに到達するとネット上で命を吹き返すことができる。集められたお金はAIDS患者たちを救うために使われる。
デジタルメディアの世界における不変的事実を挙げるとするならば、それは「進化し続ける」ということだ。新技術、新サービスが生まれれば、いとも簡単に、デジタルメディアも変化し発展してゆく。懸念すべき点は、我々がそれについていけるかどうかということだけなのだ。あなたは、この進化についていけるだろうか?
英文と和文は厳密な対訳になっておりません。
Japanese articles may not fully reflect English content.