CJコラム

イメージと異なる中国飲食事情 ~中国人は辛い食べ物が好き?~

日本人が中国についてあまり知らない理由は様々ありますが、その理由の一つは、中国についての情報入手方法の少なさにあります。テレビやインターネットは情報を得る方法の一つですが、中国については政治的なものが多く、本当の中国の姿を知るには適さない方法になっている面もあります。前回のコラムでは日中の料理名について少し触れたので、今回も引き続き食べ物をテーマに書きたいと思います。


(映画「喜福会」より)

 

中国人は辛いものを食べるのが好きですかとよく聞かれます。


答えは、いいえです。特別に辛い物が好きなわけではありません。辛い物が苦手な中国人はたくさんいます。広州や福建省東南地方の伝統料理は、まったりと濃厚な味付けです。食材に関しても、旬の食材を利用するなどのこだわりは日本料理と同じです。辛さは中国の一部の地域で(特に東南・南部沿海)ただ、料理の味を引き立たせるための脇役的な役割を担っています。

(福建省の代表的な美味「扁肉(福建省ワンタン)」 出典:https://zhuanlan.zhihu.com/p/33100697

麻婆豆腐などの辛い料理は、日本で代表的な中華料理として認識されています。味が薄くあっさりとした日本料理と比べて、その独特の辛さが印象的であるからだと考えられます。辛くない中華料理は、塩加減と旨味の点で日本料理よりも濃い味となっています。私は、日本での食事では味を薄いと感じることがよくあります。
中国国外では入手できる食材が限られるため、佛跳墻(様々な高級食材の乾物を数日かけて調理する福建料理の伝統的な高級スープ)などの手間のかかる美味な料理を作ることができません。このため、容易に入手できる辛い調味料を用いて味覚を刺激し、料理の美味を引き出すことがおいしい料理を食べるための最初の選択肢となります。


(福建省の伝統的な高級料理佛跳墻。 出典:https://www.westin-osaka.co.jp/news/2018/06/kateigahou-201806.html

 

また、四川や重慶などの湿気が多い地域では、辛い物を食べて体の中に溜まる湿気や寒気を取り除く風習があります。

 

あなたが食べている赤い食べ物はきっと辛いでしょう?


赤い物は必ず辛いわけではありません。赤はトマトや赤いエビを使った料理かもしれませんね。
赤い唐辛子の一部の品種も辛くないし、赤くないものがとても辛い場合もあります。例えば、泡椒鳳爪(茹でた鶏足の唐辛子漬け)などは白や黄色です。

(泡椒鳳爪は赤い麻婆豆腐よりかなり辛いですよ。出典:https://read01.com/xmmxk4D.html#.XdNQ59L7SHs

 

中華料理のお店では、よく赤い食べ物を掲載したポスターやメニューを利用して、客の目をその料理に向けさせることがあります。その看板写真は、迷わせる方向へおとしいれる恐れもあると思います。
日本人の場合、赤い食べ物だとわかった途端に「食べられない」と断念することが少なくありません。これは本当に残念なことだと思います。

河南省の胡辣湯は、胡椒と各種香辛料をふんだんに使用し、牛骨スープや牛肉、ラム肉などと一緒に食材が溶けるまで数時間煮込む料理です。胡椒の辛さは唐辛子の辛さとは別物で、汗をかかせて湿気を出す役割があります。冬の寒い朝に一杯飲むと、一日中体が温まります。

 (見た目は地味だが心まで温まる胡辣湯。出典:http://blog.sina.com.cn/s/blog_4bd731c40102v50c.html?tj=2)

 

胡辣湯は見ための色が地味であまりおいしそうには見えませんが、河南省の人々の日々食生活には欠かせない食べ物ものです。見た目で味を判断してしまう先入観は、おいしいもの食べる機会を逃すだけでなく、他にも損をすることがあるかもしれません。


日本人は情報の入手方法が少ないため、中国に誤解や偏見を持っている人が少なくありません。また言葉の問題から、両国の人々の交流が上手くいかないこともあります。
衣食住の中には人それぞれの生き方、考え方が潜んでいます。国や文化が異なっても、日常生活の中で交流を深めれば、お互いは同じごく普通の人間であるということに気が付くでしょう。

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